暖かな空気に、カーテン越しの柔らかな日差し、そしてクッションの利いたソファ。
読書には快適な環境だが、少し飲み物が欲しくなる。
ちょうど章の終りまで読み切り、栞を挟む。
そして本を閉じた先、己の膝の上にあるのは、エルフ独特の尖った耳と長い銀髪の頭。


いつものようにふらりと部屋にやってきて、よくやるように書棚を漁り
そしてたまにやるように、自分の膝を枕代わりにして眠り始めた。
膝を占拠されてから2時間。
そろそろ起きるだろうと思った矢先に、起き上がることなく手で顔をこすり、そのまま伸びをした。
そして一言。
「野郎の太ももは固くて駄目だね」
さらに手が何かを探すように動き出す。多分、クッションだ。
起き上がる気はまだないようだ。
「…人の膝を使っておいて言うことか」
言うことだね、とやたら誇らしげな返事が返ってくる。
うん、決めた。
飲み物を取りに行こう。
その為にこのまま立ちあがっても、自分は何も悪くない。
膝から銀の頭が転がり落ちても、悪くないはずだ。