さよなら、だね


持てるすべての力を使って出されたその言葉。

握ったその手から力が抜けていくのが分かる。



またね、だよ



もう二度と会えないことなど、彼女とて分かっている。

父母を亡くした時とは違い、「死」というものを理解した今ではそれを痛いほど理解している。

それでもいつかまた出会えるようにと、両の手で姉の手を包み込む。

瞬間、何もなかったところに光が生まれた。

そしてそれは、祈りを捧げるような彼女の姿に応えるかの如く、姉の手へと宿り、彼女の手へと伝わった。

姉の手を介して受け取ったそれはおぼろげで、一体それが何なのかはわからない。

けれど


ヘミソフィア


と頭に響いたその言葉が、自分を示すものだということは容易に理解できた。

なぜなら、もう一人の彼女は二度と戻らないのだから。