従業員には、20代の男が5人ほどいた。1人はミアの姉・アイの彼氏宮本ムサシ。アイにはもちろん、ミアやなみにも兄貴のように優しくしてくれる。あと1人、ミアやなみなど女に気を遣ってくれた男がいた。下山田カゲキだ。ミアの母や社長、他の従業員からも「人間的に真面目だ」と評判は良かった。ミアは特に、焼けた肉を取ってもらったり、頼まれごとを代わりにしてもらったり、ジュースをおごってもらったりと、いろんなことをしてもらった。ムサシが冗談で「幽霊が、ミアちゃんの後ろにっ」とおどし、ミアが本気で怖がった時も、下山田はミアをなぐさめた。下山田とミアはパーティー中ずっと話していた。
「この人、あたしになんでこんなに優しいんだろう」
パーティーも終わり、ムサシと下山田もなみも、沢詩家に入って話をした。下山田が「飲み物買ってくる」と言った。外はもう暗かった。ミアがいきなり「あたしも」と言い、2人で飲み物を買いに外に出た。
2人とも今夜が初対面なのに、あの仲の良さはなんだろう、と3人は不思議だった。しかし気付いていた。お互い好意を持ったのだろうと。