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https://news.yahoo.co.jp/articles/55ed75adb79632b6718dedc4ba0a7bee5a698b1a?source=sns&dv=sp&mid=other&date=20251122&ctg=bus&bt=tw_up
ウォーレン・バフェット率いる
バークシャー・ハザウェイが、
ついにグーグルの親会社「アルファベット」
への投資に踏み切った。
バークシャーが11月中旬に
米証券取引委員会へ提出した
保有銘柄報告書(フォーム13F)により、
第3四半期に新たにアルファベット株を取得
したことが明らかになった。
米国では、
運用資産が1億ドル(約157億円。1ドル=157円換算)
を超える機関投資家に対し、
四半期ごとの保有銘柄の開示が義務付けられている。
世界中の投資家は、
この「フォーム13F」を通じて
バフェットの相場観や
戦略の変化を読み取ろうとする。
そして今回特に目を引いたのが
アルファベット株の購入だ。
バフェットはかつて、
アルファベットの高い収益性を認識しながらも
投資機会を逃したことについて、
「失敗した(I blew it)」
と振り返っていた経緯がある。
本稿では、
この最新ポートフォリオの詳細を分析する。
進むアップル株の削減、
記録的な規模に達した手元資金、
そしてかつて見送ったグーグルへの投資開始。
これらの動きから、
バークシャーの現在の投資姿勢を読み解く。
情報開示:Glenview Trustは、バークシャー・ハザウェイ(BRK/A、BRK/B)株や他の本記事で言及された銘柄を保有している。
筆者自身も長年、バークシャー・ハザウェイ株を保有しており、ウォーレン・バフェットが同社の会長兼CEOに就任した当時に、ソロモン・ブラザーズに勤務していた。
■バフェットが過去の失敗を認め、
ついにアルファベット株の取得に動く
ウォーレン・バフェットは
2017年のバークシャー・ハザウェイ年次株主総会で、
グーグル(アルファベット)への投資機会を逃した
ことについて
次のように語っていた。
「私はグーグルの製品が機能しているのを見ていたし、どれだけ高い利益率かもわかっていた。
ガイコ(自動車保険大手)は
1クリックあたり10ドルか11ドルを支払っていた
はずだ。
クリックされても
自分たちに実質的なコストはかからないというのは、
本当に優れたビジネスだ。
私は創業者たちを知っていたし、
いくらでも質問したり、調べる機会もあったのに、
チャンスを逃してしまった」。
バークシャー・ハザウェイ(BRK/A、BRK/B)は
11月14日の取引終了後に、
第3四半期の株式保有報告書「フォーム13F」を提出
した。
投資家はこの資料を通じて、
バフェット、グレッグ・エイベル、
ポートフォリオ運用の補佐役の
トッド・コームズとテッド・ウェシュラーが、
四半期に米国の上場株式ポートフォリオを
どう動かしたのかを確認できる。
バークシャーは多くの完全子会社を抱えているが、
この報告書は同社が保有する米国株式の詳細のみを
明らかにする。
一方、完全子会社の幅広い事業の情報を含む
四半期決算は、11月1日に公表されていた。
●金融セクターが最大資産を占め、
エネルギーと消費財への偏重も続く
金融セクターは、
第3四半期にバンク・オブ・アメリカ(BAC)
株の削減が続いたにもかかわらず、
依然として資産の41%を占める
最大のオーバーウエイトだ。
上位銘柄の
コカ・コーラに加え、
オキシデンタル・ペトロリアム(OXY)や
クラフト・ハインツ(KHC)
を保有していることにより、
バークシャーのポートフォリオは
S&P500に比べて
消費財とエネルギーに偏っている。
同社は、
オキシデンタルの
発行済株式の26.9%を保有しており、
これにシェブロンが加わることで
エネルギーセクターの比率が
突出して高くなっている。
筆者は以前の記事で
バークシャーの
オキシデンタル株の買い増しの背景について
分析していた。
なおバークシャーは、
公開市場では公益事業株を一切保有していない。
ただ完全子会社の中には、
大規模な鉄道事業
バーリントン・ノーザン・サンタフェ(BNSF)や、
バークシャー・ハザウェイ・エナジー(BHE)
を通じた複数の規制対象の公益事業
およびパイプライン事業が含まれている。
■新規取得したグーグル株の規模と、
ハイテク分野の競合と比較した割安感
バークシャーは
第3四半期、
新規保有銘柄の1つとして
アルファベット(GOOGL)のクラスA株を
ポートフォリオに加えた。
保有額は43億ドル(約6751億円)に達し、
アルファベットは同社にとって
10番目に大きな銘柄となった。
同社の傘下のグーグルは、
インターネット検索で世界最大手であり、
収益の大半を広告が占め、
YouTubeやGoogle Cloudなど
多くの事業を抱えている。
同社は人工知能(AI)分野でも積極的で、
AIモデル「Gemini(ジェミニ)」は
Chromeブラウザーや
検索機能にすでに統合されている。
アルファベット株は、
年初来で46%超上昇しているにもかかわらず、
バリュエーションは
AI関連のハイテク大手よりも割安で、
予想PERは25.5倍と、
マイクロソフト(32倍)、
ブロードコム(50.8倍)、
メタ(21.3倍)、
エヌビディア(41.9倍)
を下回っている
(すべて米国記事掲載時点)。
■その他の銘柄入れ替え状況と、
外部機関によるポートフォリオ分析
バークシャーはこの他、
チャブ(CB)、
ドミノ・ピザ(DPZ)、
シリウスXM(SIRI)、
レナーA(LEN)、
レナーB(LEN/B)、
ラマー・アドバタイジング(LAMR)
の持ち分を増やした。
同社は
不動産企業をほとんど保有してこなかったが、
第2四半期に
ラマー・アドバタイジングのクラスA株を
購入したことで状況が変わった。
ただしラマーは
屋外広告の所有・運営が主力で、
典型的な不動産会社ではない。
バークシャーはまた、
住宅建設分野では
D.R.ホートン(DHI)の株を手放した一方で、
別の住宅建設株を買い増した。
同社は
アップルと
バンク・オブ・アメリカ(BAC)
の持ち分も削減した他、
ベリサイン(VRSN)、
ニューコア(NUE)、
ダヴィータ(DVA)
も売却を進めた。
特にダヴィータに関しては、
2024年に結んだ合意により、
バークシャーの保有比率が45%を超えた場合、
ダヴィータが四半期ごとに
自社株を買い戻す取り決めになっている。
米資産運用会社Glenview Trust Companyは、
バークシャーの
ポートフォリオに関する分析結果を公表した。
この分析では、
今後12カ月の株価収益率(P/E)や
株価売上高倍率(P/S)、
自己資本利益率(ROE)、
企業価値/EBITDA(EV/EBITDA)、
株価純資産倍率(P/B)、
配当利回り、
現在の負債/EBITDA、
フリーキャッシュフロー利回り、
営業利益率、
そして長期(複数年)の
1株当たり利益成長率(EPS成長率)
の市場コンセンサス見通しが
評価指標として用いられた。
総合的に見ると、
バークシャーのポートフォリオは
S&P500に比べてP/Eが割安でありながら、
負債水準はほぼ同じで、
ROEではより高い収益力を示している。
一方で、
今後3〜5年の長期EPS成長率は
S&P500より低いと見込まれている。
しかし、潤沢なキャッシュを生み出す
高品質企業を選好する
バフェットの投資姿勢は、
ROEの高さや
卓越した
フリーキャッシュフロー利回り
にはっきり表れている。
■株式の売り越しで手元資金が膨張し、
自社株買いも停止した背景
バークシャーは第3四半期に、
12四半期連続で上場株式を純売り越しにしており、
64億ドル(約1兆円)を買い付ける一方で
125億ドル(約2兆円)を売却し、
純売り越し額は61億ドル(約9577億円)に達した。
同社の手元資金は、
本業の利益と継続的な株式売却が重なった結果、
絶対額でも相対的にも
過去に例のない規模へ膨らんでいる。
そんな中、
バフェットと側近は、
自身の「守備範囲(サークル・オブ・コンピテンス)」に収まり、かつ
支払ってよいと判断できる価格で買える魅力的な株
を見つけられずにいる。
バークシャーが
新たにアルファベット株を購入したことは、
バフェットが
守備範囲をテクノロジー分野へ広げた兆し
とも受け取れる。
バフェットはかつて、
グーグルを買い逃したことについて、
「テクノロジーを十分理解していなかったから、
これが競争を制する企業かどうか判断できなかった」と語っていた。
今回の購入については、
コームズとウェシュラーが主導した可能性が高い。
●株価上昇により割安感が薄れ、
自社株買いの厳格な基準を満たさず
バークシャーの株価純資産倍率(P/B)は
第3四半期の大半で高水準にとどまり、
自社株買いは停止された。
同社が自社株買いを行うのは
「買い戻し価格が保守的に見積もった内在価値を
下回ると判断できる場合」に限られるためだ。
P/Bは、
同社が内在価値を測るうえでの主要な参考指標
であり続けている。
バークシャーの
2024年第1四半期の自社株買いは、
おそらくP/B1.4〜1.5倍程度で実施されていた。
2025年5月には
同社株のP/Bがほぼ1.8倍に達していたため、
この四半期に買い戻しが行われなかった
のも当然だった。
バークシャー株は、
10月末に市場の
ボラティリティが高まって以降では、
S&P500を大きく上回る値動きを見せたものの、
年初来リターンでは
依然S&P500に及んでいない。
現在のP/B1.6倍は、
自社株買いには割高だと考えられるものの、
同社の莫大な手元資金を踏まえれば、
株価が調整した際に
大量の自社株買いに踏み切れるため、
下落リスクは他の大半の企業よりも小さいといえる。
Bill Stone
