2025/9/2(火) 7:30配信
金価格は4月以来の最高水準に急騰しており、米財務省短期証券イールドカーブのスティープ化という、しばしば見過ごされがちな要素が勢いを増していることから、さらなる上昇の見通しがある。
この債券市場の変化は、ビットコイン(BTC)にも追い風となる可能性がある。
TradingViewのデータによると、過去10日間で金価格は5%以上上昇して1オンスあたり3480ドルとなり、4月22日に記録した史上最高値の3499ドルに近づいている。
この上昇は、米財務省短期証券の
イールドカーブがスティープ化
していることと一致しており、
10年物と2年物の利回りの差は
61ベーシスポイントに拡大し、
2022年1月以来の最高水準となった。
一方、30年物と2年物の利回りの差は
1.30%に達し、2021年11月以来最大となった。
このスティープ化は、主に2年物利回りのより速い低下によって引き起こされており、8月には33ベーシスポイント下落して3.62%となった。これに比べて、10年物利回りは現在4.23%で、下落幅は14ベーシスポイントと、より小幅に留まっている。
債券市場の用語では、これは「ブル・スティープニング(強気のスティープ化)」として知られており、短期債券価格が長期債券価格よりも急激に上昇する(利回りが低下する)現象である。(債券価格は利回りと逆方向に動く。)
Saxo Bankのコモディティ戦略責任者であるオーレ・ハンセン(Ole Hansen)氏は、このダイナミクスは金にとってプラスであると説明した。
「金にとって、より低いフロントエンド利回りは、利回りを生まない資産を保有する機会費用を緩和する。この変化は、米国の資金調達コストが高騰している間、金への配分に苦労していた、または場合によっては配分を制限されていた多くの実物資産マネージャーにとって、特に重要である」と、
ハンセン氏は9月28日の分析ノートで述べた。
ハンセン氏は、FRBがインフレと戦うために利上げを行い、それが短期金利を押し上げたため、金ETF(上場投資信託)の金総保有量は2022年から2024年の間に800トン減少したと説明した。
ビットコインは、価値の保存手段としてしばしば金と比較され、金と同様に利回りを生まない資産と見なされている。ビットコインも金も、利息や配当を生み出すことはなく、その価値は主に希少性、需要、そして市場の認識によって動かされている。したがって、2年物国債利回りの低下は、ビットコインにとっても強気の展開と見なすことができる。
一方、長期利回りの相対的なレジリエンスは、
根強いインフレ期待やその他の要因によるものであり、これも金とビットコインに対する強気な見方を支える。
INGのアナリストたちは29日、「米財務省短期証券のイールドカーブのスティープ化は驚くべきことではない。現在の低金利は、将来的にインフレをさらに悪化させるリスクがあり、これは債券にとって悪いニュースである」と述べた。
ハンセン氏は、10年物利回りの相対的なレジリエンスの多くは、現在約2.45%であるブレークイーブンインフレ率(市場が予想する期待インフレ率)から来ており、残りは実質利回りを表していると説明した。
「投資家が財政リスクや、金融政策への潜在的な政治的干渉に対して、より大きな埋め合わせを求めていることを示している。このような環境は通常、インフレヘッジとして、また政策の信頼性への懸念に対する安全策として、金を支える」とハンセン氏は指摘した。
名目利回りは2つの構成要素から成り立っている。第1に、ブレークイーブンインフレ率であり、これは債券の満期までの平均インフレ率に対する市場の期待を反映している。利回りのこの部分は、インフレによる購買力の損失を補うものである。第2の構成要素は実質利回りであり、これは購入者がインフレを上回って要求する追加の埋め合わせを表している。
ブル・スティープニングは株式にとって弱気
Advisor Perspectivesの分析によると、歴史的に、金と金採掘関連株は、イールドカーブの長期的なブル・スティープニング期間中に最もパフォーマンスの良い資産であった。逆に、株式はこのような環境下でパフォーマンスが弱くなる傾向がある。
ビットコインは、ナズダックと連動することが多い新興技術でありつつ、価値の保存手段として金のような特性も共有しているという二重の性質を持つため、興味深い立場にあると言える。
|翻訳・編集:山口晶子|画像:Jingming Pan/Unsplash|原文:Gold’s Rally Has a Big Catalyst, and It Could Help Bitcoin Too
CoinDesk Japan 編集部
2025/9/2(火) 9:22配信