(by THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン))
ここ1ヵ月ほど156円〜158円を中心に方向感の定まらない展開が続いていた米ドル/円ですが、先週は一転、米金利の低下を受けて一時155円割れまで反落しました。20日に第2次トランプ政権が誕生し、23〜24日は日銀金融政策決定会合が予定されていますが、これらを受けて今週の米ドル/円はどのように展開するのでしょうか。マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。
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投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
1月21日〜1月27日の「FX投資戦略」ポイント
<ポイント>
・先週の米ドル/円は一時155円割れへ大きく反落。
米金利の大幅低下が主因か。
・今週はトランプ大統領就任式や日銀の金融政策決定会合が予定されている。これらを受けて、日米金利差米ドル優位縮小が続くかに注目。
この米ドル/円反落の動きは、基本的には日米金利差米ドル優位縮小に沿ったものでした。日米10年債利回り差米ドル優位は、3.6%程度から3.4%割れへと比較的大きく縮小しました(図表2参照)。
ところで、米10年債利回りが大きく低下するなか、日本の10年債利回りも週後半は低下に転じました。日米の10年債利回りは基本的に連動するため、日銀の1月の利上げ期待が高まります(図表3参照)。
その意味では、日米10年債利回り差米ドル優位縮小が起こった原因は、日本の10年債利回りの上昇というよりも、米10年債利回りが大きく低下した影響が大きかったと考えられます。
ではなぜ、先週、米10年債利回りは大きく低下したのでしょうか。

米10年債利回りは、この間の高値を大きく更新し、先週は4.8%程度まで上昇しました。長期金利は景気や財政などの国債需給に反応するのが基本ですから、トランプ次期大統領の経済政策を受けた財政赤字の拡大や、金利上昇リスクへ反応した結果が現れたといえるのではないでしょうか。
加ドルの売り越しは、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見ると、すでに過去最高規模に達しています(図表5参照)が、筆者はこれについて“行き過ぎ”の領域に入っている可能性があると考えます。 トランプ氏が正式に大統領に就任すれば、関税政策の中身についてもより具体化されるでしょう。
先述したように、トランプ関税リスクを織り込んだ取引による“行き過ぎ”懸念が強まっているのであれば、このタイミングで行き過ぎ懸念の修正(債券売りや加ドル売りの修正)が入りやすくなっていると考えられます。
先週、米金利が大幅に低下したのも、この“修正”により債券売りの反動があったことがきっかけとなった可能性があります。
今週の注目点…「ドル安・円高」は続くのか? 米ドル/円は、過去1ヵ月近く156〜158円中心の方向感の定まらない展開が続きましたが、先週後半からこのレンジを一時下方向に抜ける動きとなりました。
では、米ドル反発の動きは158円で終了し、
今週は150円を目指し米ドル安・円高に向かうところとなるのでしょうか。
これまでみてきたように、
この間の米ドル/円は日米10年債利回り差との相関性が高い状況が続いています。
今後もこの関係が続くのであれば、一段の米ドル安・円高に向かうためには、金利差米ドル優位・円劣位が一段と縮小に向かうことが必要です。
今週は、20日にトランプ氏の大統領就任式、
そして24日に日銀の金融政策決定会合が予定されています。
今後一段の米ドル安・円高に向かうか、それとも米ドル高・円安が再燃するかどうかは、こうした日米の状況を受けて米金利が低下し、それにともなって日米金利差米ドル優位・円劣位縮小が続くかどうかがカギとなるでしょう。
筆者は、トランプ関税リスクを試してきた取引の修正が一段と広がる可能性が高いと考えます。
つまり、
米金利低下、米ドル売りの展開を予想します。
したがって、
今週の米ドル/円の予想レンジは、
152.5〜157.5円とします。
吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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吉田 恒
(以上、引用文)