なんだかんだで予定がグングンと合わなくなって、この連休は徹底的に休んでいるような状態で過ぎているんだけれど。ある意味では良かったかもしれない。




 すごくフラットな心境で、自分自身のやりたいこととか、本当に好きなこととか、そういうものに向き合えている気がする。小さなことで感動し、人間らしい姿に感激し、どことなく少し昔の空気を吸っているような。




 そうだ、と思う。




 昔はもっとピュアで、真っ直ぐで。いろんなことに心を動かして、様々なことに思考を向けたものだ。




 大人になっていくにつれ、考えようによっては汚いことやねじれたことも考えるようになって。そういうのが当たり前の世界に身を置いたりすると、「変わりたくない部分」まで変わるものだ。




 思春期みたいなことを言っているけれど、こういう風に定期的に思わないと、きっと忘れていく。考えなくなっていく。そんなのは、イヤだ。




 やりたいことを、やる。シンプルだけど、一番難しいこと。




 でも、やらないことには、何も分からないし。




 常に、何かをしたいし、考えたいし、そういう風に生きたいと思う。




 そんなことを思い出させてくれる、連休。




 悪くない、ね。




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 昔からジーンズやデニムは好きです。それはもう、好きです。兄がデニムオタクだったこともあるけれど、好きです。ヴィンテージなんかも手を出そうとしたことはあるけれど、やっぱりそこは僕の趣味じゃなかったので出さなかったりして。




 それでもなんやかやでずっとジーンズは履き続けて。というかインディゴや藍自体が好きなのかな。レプリカブランドのジーンズは最近のはともかくとして一通り見て履いて。デザイナーズとかもアレだけど。




 なんやかやジーンズは価格とか色とかの好みで、ドゥニームに落ち着いていました。かつてのリアルマッコイ(破産する前)のジーンズの色が未だに忘れられないけれど、もうないし。




 ジーンズだけではなく、藍染めには妙に魅かれることも確かで。高校生なんかのころは、藍染めの服をやたら着ていたような。




 昨今、ジーンズも随分多様化しました。加工なんかもすごく上手くなって(買おうとは思わないけど)、綺麗なジーンズが増えて。でも、あんまりそういうのには魅かれていませんでした。でも。




 でも、と思わせてくれた、デニムパンツ。




C O H-brocante DENIM


 BROCANTE ANTIQUES。ブロカントさんには、結局負けてしまいました。なんだろうなぁ、「総てが素晴らしくて、誰にでも薦めたい」という感じではなくて、「たぶん、好きな人は幾つかが好きだろうから、とりあえず見てみて欲しいなぁ」という感じ。人によって、魅かれるポイントが全く違うだろうし、琴線に触れるモノも違うと思う。




 現実的に、多くの人はブロカントさんの革モノ(ブーツやベルトや財布なんか)に魅力を感じるみたいなんだけど、僕は逆にその辺りにはあんまり魅力を感じなくて。僕はもっとコットンだとかウールだとか、そういう方面。あとは形。




 このデニムパンツ。ジーンズ、ではない。いわゆる5ポケットのジーンズではありません。形は言うなれば、スラックス。まぁ、昨今のハイブランドとかがやるような感じですけれど。でも、なんか違う。




 デニムそのものはしっかり打ち込まれているけれど、ライトオンス。はじめは無論、糊のせいで固いですがワンウォッシュで程よく柔らかくなる。ライトオンスだけど、やわじゃない。




 きっちりと赤耳がついている、とかじゃありません。いや、赤耳付きで作られているかなり良い生地を使ってるんですが、赤耳はぶった切ってます。デザイナー曰く「別に、赤耳とかってこれには必要ないんですよね。むしろ、パターン上ではジャマだし」と言い切る。生地工場からは「赤耳、わざわざ作ってんのに切るのかい」と呆れられるとのこと。そりゃ、そうかもしれないですね。




 ジーンズ市場からすれば、赤耳(いや、うちは黄色だとかグリーンだとかそういうのはともかく)はやっぱり大切なわけです。見栄えとしても、綺麗なアタリを生み出すためにも。それに何より、スペック大好きな方にとっては、赤耳がないなんて、となるわけで。生地屋の側も、そういうブランドしか今は無いと思ってるでしょうしね。




 ま、それはともかく。コレ、すごく綺麗なデニムパンツです。スリムタイプとワイドとありますが、僕はスリムを。履く前に既に形は素敵なんですが、履くとまた心地良い。そのままスッと真っ直ぐ履いても良いし、ロールアップも面白い。




 ワイドはさらに際立ちますが、ブロカントさんのパンツはパターンワークが何気に凄い。外からじゃなくて、中からパンツを見ると「あぁ、そう来るか」と唸ってしまう。とはいえ、店内で内側から観察を重ねる人も珍しいみたいですが。




 しかもディテールも素敵。ポケットや内部のスレキ、ここのはやたら良い。裏地のスレキのくせに、すごく綺麗。そのスレキでシャツを作っても良いくらいに。だからこそ、履いていて、そして手を入れても気持ち良い。ボタンも面白いし、フックの風合いもカンペキ。相変わらず縫製やステッチなんかも美しいし、芯も通ってる。




 「無駄なロックは好きじゃないんです」というデザイナーの言葉も分かる。ロックで仕上げる必要のない部分に、ロックは使いたくないそうです。パンツやジャケットなんかでも、例えばポケットの内の縫製とか、様々な部分にロックって結構使ってしまうんですけどね、やりやすいし安いから。でも、それをしない。




 ロックを使ってる品も勿論あります。でもそれは「ロックの良さ」が確かに出ている。むしろ、ロックだから良いと言える。




 ブロカントさんの品を見ていて思うのは、縫製や端処理や形作りなど、いわゆるモノを構成している「ツクリ」の部分が魅力になっている。「ツクリ」の部分そのものが、もはやデザインと言えるくらいに綺麗に作られているんですよね、そこが好き。




 だから、こういうスラックス的なデニム、とかってそんなに魅かれないのに、ガツンと来てしまいました。それにしても、もの凄い出来が良いのに、ここのモノは基本的に手ごろなんだよなぁ……すごいな。




 もう一つ、そうですね、アレがいます。それとはまた別に、近いうちに来春夏の展示会だそうな。なんか一応覗こうかな、とは思います。何かを頼むかは別として、服が見たいし、話が聞きたいから。デザイナーさんがいると、いろんな話が聞ける。こっちが聞く前に、ガンガン話してくれる。というか、普通に服に対する熱い何かを聞きたいなぁ、とか思ってしまう。




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 久しぶりに、昔の雑誌を見返す。かつては気が付かなかった細かい部分に、気が付いたりする。




 「このときは、あんまり意識してなかったんだなぁ」と不思議に思う。やはり時間は経過して、いろんなことが自分の中に増えているのだ。




 その分、失われた何かもあるのだと思う。でも、失われているから、それが何かは分からない。失うとは、そういうことだ。




 感じるのは。




 人にまつわることは、一切失っていないということだ。忘れていない、と言っても良い。




 これだけ苦手だと思っていても、人が好きなんだね、と変な心持ちになる。     arlequin