世間は初売りやらセールやらって感じで、ちょっとワイワイしたりしてますが、今年はおとなしくしていて。欲しいモノがイマイチないというのもそうだけれど、セールやらとは無関係の部分で買わなくてはいけない服やら雑貨があるので。




 家でずっとギターを弾いていたように思う。MTRをずっと稼動させながら、ふむふむと弾く。考えてみればあと2週間やそこらしか時間はなくて、結構アレだなと思ったりする。




 自分で作った歌達や、あるいは少し人の歌なんかを歌っていると、こう様々と想ったりする。




 ある人には逢いたいなぁと想い、ある人にはウダウダしたいなぁと想い、またある人には話をしたいなぁと想う。




 どの人にも最終的に結局逢ってもいないし、ウダウダもしていないし、話もしていない。




 どこか寂しいような気もするし、切ないような気もするけれど、そんなもんかもしれない。




 それでも心を暖かく保っていられるのが、妙に不思議に感じる。




 でも、早く明日になればいいな、と想う。




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 ・「陽だまり」




 いつかの陽だまりを思い出す。不器用としか言えないくらいに正直で、呆れるくらいに幼かった。




 随分と、時間が過ぎていった。冬を越えて、春を通過し、夏を飛び越え、秋を暮らし、そしてまた冬を越えようとしている。




 その間に、わずかばかり正直さは失われ、幾らかの幼さを捨てることが出来た。




 良かったことなのかどうかは、分からない。ただその事実がここにあるだけだ。正直さの代わりに、わずかばかり誠実さを手にし、幾らかの無邪気さを拾い上げた。




 結果としてたどり着いた場所は、いつかの陽だまりとはまた、イメージもニュアンスも、響きも温度も違う陽だまりだったかもしれない。




 心地良い、と言って差し支えはないと思う。決して誰もが納得するようなものではないものだとしても、少なくとも今は心地良いと言える。




 正しいかどうかは、やはり分からない。ある観点から見れば果てしなく間違いであることはたぶん明らかだし、ある観点から見れば限りなく正しいことも明らかだからだ。




 選択はいつだって出来た。選んだのは、他の誰でもない。だからこそ。




 今日の陽だまりを思い出す。




 僕は明日の陽だまりを想い、しばし目を閉じる。






 ・「シャープペンシル」




 ノック、ノック、ノック。




 エッジを立てるように、常に尖った先端を保てるように、筆を滑らせる。




 ノック、ノック、ノック。




 無駄な圧力はかけないように、純粋にその柔らかさを信じるように、腕をふるう。




 ノック、ノック、ノック。




 紡ぎ出される形を敬い、出来上がる文字を愛し、じっとただ見つめる。




 ノック、ノック、ノック。




 ノック、ノック、ノック。




 ノック、ノック、ノック、ノック、ノック!!




 仮初め。




 ノック?




 真実を探す。




 ・「モラトリアム」




 一つ、また一つ。




 そんな風にして、生きようとする。




 生と死の間にあるものは。




 生きていることそのものが、所詮はモラトリアムに過ぎない。




 モラトリアムを生き、その中でモラトリアムを消化していく。




 ならば。




 生の前にあるもの。




 そして死の後にあるもの。




 そんなもの達。




 本当に必要なのは、どれだ。




 僕は、モラトリアムでいい。




 ・「くるみ」




 「いつだって、先のことを考えたいと思うんだ。明日のこと、あさってのこと。来月のこと、来年のこと。ずっと遠い先のこと」




 「誰でも、考えてるんじゃないかしら、多かれ少なかれ」




 「多かれ少なかれ。確かに僕もそう思う。きっと君だって、幾つかの先を考え、さらに幾らかの先を見ている」




 「うん、見てる」




 「でもきっと、考えていないこともある」




 「そりゃ、あるに決まってるじゃない。総てのことなんて、考えていられないもの」




 正論だ。彼女はどんなときも正論を奏でる。




 「僕は総ての先を考えたい、と思うわけじゃない。ただ、大切な何かの先を考えたい、と思うだけだ」




 「良いんじゃないの、そうすれば」




 「その先の中には、君がいる」




 「そう、ありがとう」




 冷静だ。彼女はどんなときも平静を保てる。




 「僕は君を必要としている。今、だけじゃない。きっとこの先も、かなり君を必要としている」




 「必要とされるのは、嫌いじゃないけれど」




 「でも、とりわけ好きでもない」




 「そうね、そうかもしれない」




 「でも、僕は君を必要としている」




 「ええ。ありがとう」




 僕は何が言いたいのだろう。本質的な言葉が何も出てこない。ダラダラと終りの無い言葉ばかりが浮かび、核心を突く言葉がない。




 「うまく、言えない」




 「知ってる」




 「うまく、伝えられない」




 「それも、知ってる」




 「どうしたら良いか、分からない」




 「全部、知ってる」




 「そうかもしれないね」




 「未来」




 「未来?」




 「あなたは、未来が欲しいってことだと私は思う」




 「うん……未来ね」




 「私はあなたの未来を少しだけ、知ってる」




 「全部じゃ、なんだね」




 「全部じゃ、ないわ。でも、知ってる」




 「教えてくれるのかな、それは」




 「言わない。言わなくてもそれが訪れるまで、一緒にいればいいの」




 「訪れるまで」




 「そんなに遠くはないわよ、見方によってはね」




 「そう、ありがとう」




 「どういたしまして」




 「僕は、君が好きだ」




 「そんなの、ずっとずっと知ってる」






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 願いは叶うとよく言われるけれど、そんなのは本当じゃない。願っているだけでは、何も世界は動かない。少なくとも、それは分かる。




 それでも願ってしまうのはきっと、勇気がないからだと思う。




 勇気は、欲しい。     arlequin