今年はずっと、いやもっと長いことずっと、「人のために何かをしたい」なんて、いわば大それたことを思っていたりしたけれど、思っているだけでは結局どうにもならない。
何かというよりも、結局は笑顔を生み出したいということに他ならないわけだけれど、いかんせん色々なものが僕には足りないから、どうにもならない。
「一体、僕は何がしたいのだろう。僕は何をしているのだろう」。そんな風に何度思ったことか。
僕にとって、本当に大切なものは、いったい何なのだろう。
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こういう具合に、ブログには相応しくないくらいにセンチメンタルな気分なので、今日は雑記。いつものように適当にそれこそ、歌うたいのバラッドを歌うように、難しくなく、ただひたすらに何かを書く。
・「シャツ・パーカー・ジーンズ」
さぁ、でかけようか。それほど暑くないし、風も強くない。もしかしたら、向こうは少し寒いかもしれない。とりあえず、ジーンズ。生地はしっかりと厚い。ウォッシュも適正にしているし、随分とアタリもヒゲも、あるいは全体のインディゴの風合いも良くなってきた。ピッタリとテーパードが効いて、丈は気持ち短い。コットンの総てが、気持ちよく足を包み込む。
どうしようか。街を歩く、コーヒーを飲む、空を見上げる、それとも抽象的な意味での絵を描く。きっと、シャツ。白い、シャツ。無理のない、純粋に無邪気な白いシャツ。袖はわずかに、捲くろう。生地は目が粗くても、コットンの香りが立っているほうが良い。あるいは、チェック。ふわっと軽い、チェック。あらゆる状況に、対応できるように。
パーカー。それは僕の出番じゃない。もちろん僕も気持ちのよいパーカーを着るし、自分にフィットするパーカーも着る。でも、今日は違うな、今日は僕の出番じゃない。ゆらゆらと、ちょっと気だるい空気を、僕は見ていれば良い。オーケー、そうだ、僕はパーカーも好きだ。
従順。それは響きは悪くないけれど、面白くはないかもしれない。ジーンズは足をある程度締め付けてくれたほうが良いし、シャツだって微妙な制約があったほうが良い。パーカーだって、じゃじゃ馬の如く自由なほうが良い。
それと、同じだ。
ちょっと我が侭な感じが、良い。
さぁ、でかけようか。
・「ブレンド・ダージリン・シュガー」
「美味しい砂糖って、なかなかないんだなぁ」
「砂糖なんて、必要ないじゃない」
「そうなんだけどさ、でもね、砂糖が加わった世界っていうのも悪くはないんだよ。そう、悪くないんだ」
「好きにしたらいいよ」
ブレンドの魅力はきっと、バランスにありスムースにある。ダージリンの魅力はきっと、真っ直ぐさにあり強さにある。
「この砂糖、入れて飲んでみて欲しいんだけれど」
「断っても、いいのかなぁ、それは。それとも、拒否権はないのかな」
「断っても構わない、ただそこに小さな悲しみが顔を出し、大きな喜びの機会が失われ、それらは妖精が魔法を唱えるように、静かに過ぎ去っていくだけだ」
「要するにさ、ないってことだよね」
「あるいは」
ティースプーンに一杯、そしてもう一杯。ブラウンシュガーが積まれ、ひそやかに液体の中に飛び込む。確かに融和し、確かに広がりを見せ、確かに姿を消し気配だけを残していく。
「すごく、美味しい」
「そう、すごく、美味しい。僕らは素直に生きるのが良いと思うし、いつだって中心はもっていた方が素敵だけれど、それとこれとは違う。世の中ってのは、もっと複雑なものなんだ」
「よく分からないけれど、この砂糖は、良いんじゃないかな、たぶん」
「それだけが伝われば、十分。ブレンド、飲む?」
「うん。砂糖、入ってるの?」
「まだ、入れてない。愉しみは幾つもの形があって、それを踏むステップはまた幾つもあるんだ。まずは熱いブラック、そして少し冷めたブラック、一部を移しておいて、砂糖を入れたブレンド、そして冷えたブラック。これだって、幾つもの一つでしかない」
「つまり、飲んでいいってことだよね」
「おそらくは」
ブレンドではなくストレートでも、結局は同じ事だ。もちろん相応しい砂糖というのは、それ相応に変わるし、それが砂糖ではなく、ハチミツかもしれないし、練乳かもしれないし、ジャムかもしれないけれど。
「素敵な、ブレンドだ」
「ありがとう。淹れた甲斐があるよ」
「ダージリンもさ、これくらい淹れてくれれば良いのにさ」
「まだ、修行中なんだ。発展途上。でもね、ダージリンが総てじゃないよ。アッサムだって心地良いし、アールグレイだって面白い」
「いや、だからさ、紅茶全体の話ね、全体」
「分かってる。もう少し、待ってくれればいいんだ。そのうちに、ビックリするくらいのダージリンを淹れるようになってみせるよ。きっと、笑顔になる」
「その時は、ありがとうを言うね」
「そうしてくれると、すごく嬉しい。じゃあとりあえず、残りを飲もう」
「そうだね、丁度温度も下がってきたし」
「猫舌じゃ、ないんだけれどね」
「でも、猫も悪くないでしょ」
「そうだな、悪くない」
「ニャーって、鳴くよ」
「うん、可愛い」
「ニャー」
「ありがとう」
「にゃー」
「ありがとう」
「おかわり」
「うん。すぐに」
・「メロディー・コード・フレーズ」
メロディーが波打てば、それで満足が出来るわけじゃない。
コードを引き出せば、それで満足が出来るでもない。
フレーズが響き出せば、それで満足しうるでもない。
メロディーが波のように流れ、コードが風のように伴い、フレーズが空のように覆う。
大切なことは、そんなものたちの中に、あたかも隠すようにもぐりこませる。
感情であり、情熱であり、心であり、夢だ。
すぐには分からないように、でも単純に分かるように。
たった何分かのメロディーに、たった幾つかのコードに、たった数文字のフレーズに。
総てを託すように。
歌う。
・「スマイル」
スマイル
・「シークレット」
本当に言いたいことは、文章にはならない。言葉にもならない。音楽にもならない。ただそれぞれの中に、少しずつ溶け込ませて、僕は生きるしかない。
シークレット?
そんな高尚なもんじゃない。
臆病なだけだ。
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やっぱり書くのは気持ちよいなぁ。下らない文章で、大した長さでもないけれど、それでも楽しい。「ブレンド・ダージリン・シュガー」の部分が一番楽しかったかなぁ。ねぇ。にゃー。 arlequin