日本経済に吹き荒れる二つの“カミカゼ”
「皆、ドル円は125円、140円まで行くと考えている。
私もだ。2年前に、私はドル円が最終的に200円に向
かうと予想していた。いつかそうなる」(11/24付米C
0NBC)。・・・およそ490億ドルの運用資産規模を誇る
米ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック
CEO(最高経営責任者)は、かねてから「大いなる円安」を
唱えていた人物だ。2012年10月、ガンドラック氏は「政
府(日銀)がどんどん積極的な資産購入へと追い込まれ
地国通貨が下落しかねない国」として日本を挙げ、「最終
的には1ドル=200円になる」と宣言。同氏のスタンスは
現時点でも変わっていない。
今年8月、米ワイオミング州で今後の為替を占う上で重
要な出来事が起きた。俗に言う「ジャックソンホールの密
約」である。「日米欧び中央銀行総裁をはじめ金融当局幹
部が一堂に会したジャックソンホール会議で、『米国は10
月に量的緩和を終了。来年半ば以降に利上げ』を確認し
た。同時に、米国がドル高を受け入れる代わりに日欧に対
しては引き続き緩和的な金融政策の継続要請があり、日
欧がこれを受け入れた」(10/21号エコノミスト誌)という
ものだ。
リーマン・ショック以降、非伝統的な金融政策(量的緩和)
を実施してきたFRB(米連邦制度準備理事会)内には、我々
が想像している以上に金融政策におけるタカ派(=金融緩
和に消極的。インフレに対する懸念が強い層)が多く存在す
る。だからこそ、リフレ派(=金融政策におけるハト派。金融
緩和に積極的な層)の代表的な存在であったバーナンキ前
FRB議長でさえも、執行部から「量的緩和のコスト」を提示
されたのを期に本気で金融政策の出口に関する議論を始め
た。しかし、マネーの増発(資金供給)を急に止めれば、市場
が極度に混乱する可能性もある。
そこで、FRBが白羽の矢を立てたのが、日銀とECB(欧州
中央銀行)だ。密約説を裏付けるかのように、FRBが量的緩
和の終了を発表した2日後に日銀は追加緩和を発表した。追
加緩和により日銀は月額にしておよそ200億ドル強の日本
円を増発するが、これはFRBが緩和終了直前まで増発してい
た額とほぼ同じだ。すなわち、日銀は米国にとって使い勝手の
良い資金供給役という「ババ」を掴まされたと言える(ECBも来
年中の量的緩和の実施が取り沙汰されている)。