今年3月に発生した「キプロスショック」は、私たちに極めて
重要な示唆を与えている。一つには、ユーロ圏国家において
すら「預金封鎖」と「資産課税」という強硬手段が用いられ、
私たちにとっても他人事ではないということ。そしてもう一つ
は、海外口座はその開設場所などによってはとてつもなく大
きなリスクを伴うということだ。もし、あなたが海外口座を持っ
ているのなら、今一度リスクを正しく認識し、臨機応変に対応
する必要がある。中でも、特定のある国に口座を持っている
場合は要注意だ。
キプロスの預金封鎖と資産課税は、市民生活を混乱に陥
れた。現在も預金者が一日に引き出せるのはわずか300ユ
ーロ(約3万6000円)で、住民はATMに長蛇の列をなして
いる。
しかし、この「キプロスショック」でさらに甚大な影響を受け
た人々がいる。ロシア人富裕層たちだ。彼らは「オフショア銀
行」としてキプロスの銀行に多額の資金を預け入れていたの
だ。その多くはロシア国内に預け入れができない「隠し資産」
と言われているが、今回の危機対応法案によって10万ユー
ロ超の預金は60%を取り上げられるため、キプロスにあるロ
シアマネーの多くはキプロス再建の原資として「没収される」
見込みだ。
近年、日本では海外口座開設ブームとなっているが、もしあ
なたが海外口座を持っているのならば、ご自身の口座が第二
の「キプロス銀行」になる可能性を振り返るべきだ。特に私は、
簡単に海外口座開設ができるとしてここ数年多くの日本人が
押し寄せたある国はキプロスとは別の理由で極めて高いリス
クをならんでいると見ている。それはどこか・・・「香港」だ。
香港は、1997年7月にイギリスから中国に返還されて以
来、「一国二制度」の下で高度な自治が実施されている。アジ
ア圏有数の金融集積地として、また「オフショア人民元」市場
の中心地として世界中の金融関係者が集まっているが、年々
中国の影響度と政治的圧力が強まっている。昨年9月には、
中国の愛国意識を植え付ける「国民教育科」の必修化に反対
する抗議デモで必修化が撤退されるという事件があったが、
このウラでは香港上層部の「親中化」が著しく進み、中国の「
洗脳教育」ともいうべき「国民教育」の普及に向けて着々と準
備が進んでいるという。他にも香港メディアの大手2局が中国
企業傘下となり、中国政府の影響を大きく受けるようになった。
中国はあまり目立たないように、着々とその影響力を強めてい
るのだ。