吉野くん、
サブデビジョン(住宅地)を、
半インチ(12ミリ)のナイロン紐で曳(ひ)かれて行きます。
ボク、口が半開きのまま、
若い兄ちゃん2人に従い、
右、左、右と一歩一歩蹄(ヒヅメ)を出す、
その吉野くんたちの力強い歩みに、ボクの視線も引っ張られます。
そして、
3人目が、
40代の日焼けした男性に、
ゆっくり曳かれて来ます。
ボク、訊こうかどうか、
もじもじして、
ボク、
「Asa mo boss ?/どこまで行きますか?」、
男性「Sa GTH /GTH だよ」と、
「GTH」は、
ここから3kmほどのエリア名
ずいぶん前、
マンダムか何かのCMで、
ゴンチチのギターが、
ポロンポロンと静かに鳴る中、
「草食動物はどうして、
優しい目をしているんだろう」、
そんなセリフがあったのを思い出します。
ボク、その他にも訊こうと思いましたが、
言葉が出てきません。
「Sege ampin / じゃ、気をつけて」、
とだけ、なんとか口に出します。
「その他」には、
それほど訊くことも無いでしょうに。
半インチのナイロン紐を解かれるとき、
もう、
彼らの蹄は舗装路を、
踏むことが無いのと同じように。



