トリル
気まぐれな雨が止んだら、 そこに出来た水たまりには、
くっきりと空模様が映し出されるほどの、
デコボコに荒れたコンクリート舗装路。
ドライバーは慣れた感じでハンドルをきり、
点々と散らばる穴を避けて走らせますが、
油断しているとお尻から突き上げられ、
舌を噛んじゃったり (笑
お客さんも路面から目を離せない、
ここ北緯7度のトライシクルです。

ここでは「乗れるだけ、乗ってもいい」、
そんな不文律のルールがあり、
ドライバーも、一人いくら、
荷物も量(重さ)に応じて交渉次第、
人であろうと、お米、ニワトリの餌であろうと、
お客さんとの合意納得のもと、
誠にテキトーな公共交通機関なんです (笑
ボクの前を走るトライシクル、

少年の脚にもたれている黒い顔したチビ、
そよ風が流れるようにチビの顔から頭を撫でて、
その度に頭がゆっくりと後ろへそれて、
両目を細め、うとうとし始めます。
優しく毛を梳(と)かすようなその手つき、
見ているボクの手のひらにも、
チビの頭の形が伝わってくるようです。
タイヤがデコボコを拾おうと、
ブレーキをかけられようと、
アニキの脚にもたれる弟、
眠りに落ちるのは、
もうすぐです。