16:30
動物園を訪問しましてね、

ぼってりしたクリームっぽいモノが入っている、
5ペソのスパニッシュ・ブレッドを、
類人猿たちに与えて (笑
以前住んでいたサブディビジョン(住宅地)の周りに、
ぽつりぽつりとあるスクワッター(不法居住)ゾーン。
普通、狭い路地沿いに密集して建てられていますが、
ここは珍しく、原っぱの真ん中にあり、
テレビで観るアフリカ草原にある集落のようです。
ボク、チビ猿軍団たちへ、
ビサヤ語の単語を質問します、
すでに意味が解っているモノを。
きちんと応え、説明できるかを試して、
ちょっとズルいですが、
「ボクが先生を評価」するんです (笑
参考までに、フィリピンでの授業は、
通常、英語で行われ、英語の授業はもちろん、
算数、理科、その他も英語です。
(彼らの国語は、タガログ語として授業があります)
では、授業を始めます、
ボク「 tabok って何? 」、
意味は「越える、渡る」という意味で、
道路を越える、渡る、そんな使い方です。
アシュリー(女子10歳)、ちょっと小首を傾げてから、
排水路を持たないスクワッター・ゾーン、
その土の広場を横切るように、
ゆっくりと流れる排水の水溜りを、
ビーチサンダル履きで軽くジャンプして、
「これが、tabok よ」と、
ボク、英単語の「 cross 、だね?」、
アシュリー、両目を見開き大きくうなずき、
金色のピアスが陽射しにキラキラします。
ボク「 antos って何?」
意味は「我慢 」という意味です。
年長のミカエラ(女子11歳)、
「え~っとねぇ~、そう」と言い、
自分の背中を少しそらして、
片手でお腹の前で半円を描き、
「ニンシンしたら、antos でしょ」、
ニンシン、という言葉、
フィリピンでは子どもでも、よく会話に使い、
それだけ多産ということです。
家庭の事情で一時ここを離れ、
親せきに預けられていたミカエラ、
以前は、おしゃべりでおしゃべりで、
目をキラキラさせて、よく笑い、
犬歯の前が一本欠けているのが判りました。
ですが、ここへ戻って来て、
あのキラキラした瞳が消え、
笑いも、どこかぎこちなく、
預けられた家で何かあったのでしょう。
ボクが、「ん?」と、その説明に納得しないと、
チャン(女子10歳)が後を継いで、
「風邪ひいたら、antos でしょ」と、
顎を引き、痛いのを我慢している仕草をします。
チャンのお母さんが中東クエートへ、
(中東へ、メイドなどでの出稼ぎは一般的)、
2年間メイドの出稼ぎに行っている間、
お父さんがガールフレンドをつくり、
夫婦は離婚となり、
お母さんは双子の姉たちを連れてマニラへ、
チャンはお父さんと、
今は妊娠しているそのガールフレンドと暮らしていて、
10歳のチャンは、
それこそ「我慢」しているのでしょう。
それぞれの家庭に、それぞれの事情がり、
どうしても、そのことに気がいってしまい、
授業に集中できません。
土を踏み固めた広場から砂利道へ出て、
帰り際、
チビ猿軍団が大きく手を振り、
ボクも手を振り返し、授業は終わります。
