つらつら/鼻 | ストイックタンタン(仮)

ストイックタンタン(仮)

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日曜の暮れなずむが、

共に生きている二人、

その日初めて会うのです。

コーヒーが丁度良い温度に覚めるまでの、

接近戦の火蓋が切って落とされる。



言葉は嘘をついたから、

言葉を使うことを、

その男女はやめにした。

試しに、

互いの目を盗み見た。

男は敗れて、女が勝ってしまったので、

女は目を使うことをやめにした。

男も、目を使わないことにした。



目を使わないことは、

いくらか不安であることに気づいた二人は、

どちらともなく互いの肌に触れてしまった。

そのこそばゆさは、

互いの限界を完全に振り切れ過ぎていることを、

クスクスという息遣いでもって悟ったときに、

二人はその実験をやめにした。






嗅覚だけが頼りの、

二人の日曜暮れなずむ。

緊張の接近戦を始める。

互いのわずかの呼吸で

各々知らぬその日を知って、

いつも、

接近戦は引き分けに終わる。

期限付きの平行線は、

まだ続く。



「そりゃそうよ」
「そりゃそうだ」


戦いの後、

コーヒーは丁度良く覚めている。

二人は、暮れなずむに、ひっそりたたずむ。