大阪教育新聞3月号「子どもと絵本を結ぶVOL.158」にて『森は生きている 12月のものがたり』を紹介させていただきました。小学生の時に出会った、大好きな物語です。
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『森は生きている 12月のものがたり』
作 マルシャーク
絵 エリョーミナ
曲 林光
青木書店
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(以下掲載文です。)
新年を控えた大晦日に、わがままな女王が、春に咲くマツユキソウを摘んだ者には褒美を与えるというおふれを出し、国中は大騒ぎ。継娘(ままむすめ)は、いじわるな継母と姉娘の言いつけで真冬の森へ出かけ、焚火を囲む十二人の月の精霊に出会います。継娘の話を聞いた四月の精霊は他の月の精霊たちに頼んで時を譲ってもらうと、たちまち冬から
春に季節が変わり、マツユキソウが花開く…… 。
ソ連の詩人で児童文学者のサムエル・マルシャークが、スロバキアの民話を元に創作し一九四三年に発表された児童演劇作品です。日本では音楽劇やオペラ、世界名作童話のアニメ映画としても子どもだけでなく大人からも愛されています。私が本作と出会ったのは小学生の時、演劇の発表会で出演して以来、ずっと大好きな作品です。
森の中で生きる動物たちがおしゃべりしながら追いかけっこをしたり、十二人の月の精霊たちが集まって大晦日に焚火を囲んだり、冬に春が訪れるという森の不思議な世界観に引き込まれます。より一層物語の魅力を印象付けるのが劇中歌で、一九五四年に日本で初めて演劇作品として上演された際に林光氏が作曲した楽曲です。本書には楽譜と歌詞が掲載されていて、物語と共に音楽も楽しむことができます。
冬の物語ですが、私は春になると本作が恋しくなります。なぜなら、主人公の継娘にとってのヒーローは、真冬にマツユキソウを咲かせた〝四月の精霊〟だからです。四月の精霊は、明るく思いやりをもって生きる継娘を知っていて、他の十一人の月の精霊たちと共に、最後まで継娘を大切に思い、助けてくれる存在です。継娘とは対照的に描かれているわがままな女王が、一連のできごとの中で気付きを得る姿も物語の見どころです。
絵本としては長編で、三〇人の登場人物が繰り広げる人間模様の中にユーモアを交えながら、誠実に生きることの大切さや自然と共に生きる人間のあり方など、壮大なメッセージが込められています。大人になった今でも、日々さまざまな選択と決断をして生きる中で、ふと、思い出される物語です。
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