被災地を取材するために、八戸に置いておいた

原付を取りに行こうと、夏タイヤのポンコツな

トラックをレンタルし、東北道を走り始めた僕。


思えば、出発した時に、関東地方のお天気が、

「皆既月食を見るのにピッタリですね!」

清々しい天気だったことも、実は、ネタブログの

神様が用意した丁寧な前フリだったのです。


「よーし、いい天気だ! 八戸に行こうぜ!」


この時の僕は、天気予報の通り、関東地方も

晴れだったことに気を良くし、何度もポケットに

原付のカギを入れたことを確認し、ケータイの

充電もフルの状態で、予備に持ったバッテリーも

フル充電されていることを確認して、出発しました。


しかし、関東地方の天気が、ものすごくピーカン!

実はこれ、冬型の気圧配置が強まった証拠。


天気予報では、たびたび耳にする言葉ですが、

「冬型の気圧配置が強まる」とは、関東では

雲一つない秋晴れや冬場れになる一方、東北や

北陸では、気温が下がるため、大雪が降ったり、

冷たい北風が吹き荒れるということ。


つまり、今になって思えば、関東地方の天気が

予想よりも良かったのだから、喜ぶのではなくて、

「あれ? ひょっとしたら、東北は天気予報が

悪い意味でハズれるかも!」と思うべきだった

わけなのですが、当然、そんなところまで僕の

頭が回るはずもなく・・・。


思ったよりスピードも出ないし、エアコンを切れば

3分で寒くなるし、エアコンをつければ3分で喉が

痛くなるというポンコツなトラックを運転しながら、

盛岡を過ぎたあたりでしょうか。


悪い意味で天候が激変。


うっすらと雪が舞い始めてしまったのです。

「これは早く着かないと、大変になるぞ!」。

アクセルを強く踏み直しますが、ウワンウワンと

大きな音を立てるだけで、ちっともスピードは出ず。


八戸は海沿いにある街だから、雪は降らないと

聞いているし、スピードの出ないトラックとはいえ、

時速80kmで行けば、距離的に1時間ちょっとで

八戸に着けるはず。


もし、途中で雪が酷くなってしまった場合には、

すぐさま引き返すけれど、この程度の雪なら、

いっそのこと八戸に行ってしまい、その先の話は、

八戸のマンガ喫茶で作戦を立て直すことにしよう。


最悪の最悪、レンタカーの延滞金は覚悟して、

八戸のスーパー銭湯で1泊することも想定し、

どこかのパーキングエリアで無駄に休憩しないで、

雪が酷くならない限り、八戸に行く決断をしました。


ところが、この決断こそが、

「最悪の選択」だったのです。


岩手や青森は田舎なので、インターチェンジの

1区間が、ものすごく長い。ポツポツと降り出した

「このくらいなら大丈夫」という雪は、1区間の間に

大雪へと変わり、すごい勢いで積もり始めたのです。


「これはヤバい!」


さすがの僕も、これ以上進むのは危険だと思い、

次のインターチェンジで降り、引き返そうと決意。


スピードの出ないポンコツな夏タイヤのトラックを

慎重に運転しながら、もちろん、スピードも落とし、

進んだのですが、スピードを落とせば到着も遅れ、

その間にどんどん雪が積もっていくという悪循環。


完全に詰んでいる!


しかし、高速道路の真ん中で立ち往生なんて

最悪の最悪ですから、引き返せないとしたって、

とりあえず高速道路を降りる必要があるわけで、

高速道路を降りてしまえば、例えば、タクシーを

呼びつけて、いっそビジネスホテルに泊まるとか、

その先の作戦は、いくらでも考えられるはず!


「あの時、胸元のゆったりとした服を着ている

女性が電車に座っていたので、もしかしたら、

真横に立てば、上からビーチクが拝めるかも

しれないと、しれっと移動して、上から覗いたら

ピンクのヒラヒラのついたブラジャーが見えて、

有頂天になった時の罰を、今、喰らっているなら、

謝りますんで、どうか雪を止めてくんしゃい!」


寝技だけでは我慢できない柔道選手もいる中、

それに比べたら、僕は法律の範囲内でしかエロを

嗜んでいないのに、こんな罰はあんまりだと思い、

ひたすら次のインターチェンジを目指したのですが、

やっとの思いで辿り着いたその場所を見た時に、

僕は愕然としました。


高速道路の車が走る部分は、いろんな車が

走っているから、積もった雪がタイヤに踏まれ、

水みたいになっているのですが、利権のために

作られたとしか思えない、誰も利用しないような

クソ田舎のインターチェンジの下りスロープには、

白い雪がビッシリと積もっている!


悪い予感しかしません。


ギリギリの状態で、タイヤのラインには雪が

積もっていない高速道路と、新雪が降り積もる

インターチェンジの下り坂、どちらが安全か・・・。


このまま進むしかなくね?


思えば、「インターチェンジとインターチェンジの

わずか1区間の間に大量の雪が降る」なんて、

想像すらしていなかったのがいけませんでした。


一歩間違えれば、事故って他人様に迷惑を

かけていたかもしれないのだから、ブログに

書いてネタにするようなことではないんですが、

川の真ん中でキャンプをしちゃう人もいますし、

台風の日に、「ちょっと田んぼを見てくる」

言ってしまうジジィもいるんだから、こういうことが

実際に起こるってことは、皆さんも知っておくべき!


ポイントは、何かあったら引き返そうと思っていたし、

雪が降った時には乗り換える準備までしておいて、

このザマだということです。


しかし、カワイイ女のコとセクロスするまでは

絶対に死ねませんし、こんな所で事故った日には、

いくら保険に入っているとはいえ、あとからいろいろ

免責にならないと言われ、ますます貧乏になって、

怖いお兄さんが毎日玄関を叩く、エキサイティング

ライフが始まってしまう可能性もゼロではない!


そんな時に限って、カワイイ女のコに、「今夜は

帰りたくないな!」なんて言われてしまったら、

玄関に怖いお兄さんがいて、僕も帰れなくなり、

せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれない!


全神経を集中させ、

気合いで乗り切る。


僕の中では、ハドソン川の奇跡を起こした

パイロットと同じですから、この危機的状況を

どんな手段を使っても絶対に乗り切るしかない!


結果、ポンコツすぎて、マニュアル車だったことが

不幸中の幸いで、ブレーキをかけたらスリップに

つながるかもしれないと、変速ギアを使い分けまくり、

アクセル踏みっぱなし、オールエンジンブレーキの

神業ハンドリングで乗り切って、八戸に着く頃には、

雪がまったく降っていないという、青森あるある!


八戸に着くと、僕の原付は盗まれてもいなくて、

普通に置いてあり、無事にトラックに積み上げ、

帰ることになったのですが、朝の9時に出発して、

なんと、到着したのが、18時30分!


まったく休憩を取らず、

9時間半かかってた!


しかも、ここからが本当に過酷な旅の始まり!

先程の雪を考えると、高速道路を走って帰るのは

あまりに無謀なので、沿岸部の下道を走る以外に

僕が東京に帰る方法はなかったのです。


つまり、津波で被災したエリアを巡るように、

沿岸の地域を通って帰るしかないってこと!

それは奇しくも、9ヶ月経った被災地の現状を

トラックで見て回ることになったのですが・・・。


一人で運転をしていたので、運転する以外には

やることもないので、走っている途中、いろいろと

哲学的なことも考えさせられ、ちょっとした悟りの

境地に達しましたので、この続きは、また明日

お届けしたいと思います。