皆さんは小学生の頃、どんな夏休みを過ごしましたか?


僕が小学生の頃は、よく家の前で野球をしていました。

僕の家は、いわゆる路地を入ったところにある住宅街で、

ほとんど車が通ることはなかったんです。


だから、マンホールをホームベースにして、

北村さんの家の前にある電柱が1塁ベース、

広瀬さんの家の前にあるマンホールが2塁ベース、

椛島さんの家の横にあるガチャッとした石が3塁ベース。


電柱より向こう側の北村さんの家に入るか、

椛島さんの家の駐車場の屋根にボールが乗っかり、

落ちてきたところをキャッチできなかったらホームラン。


そんな「子供ルール」で、弟と野球をやっていました。


その当時は、ゴムボールを使って野球をしていたので、

ベタなマンガのように、誰かの家の窓ガラスを割るような

トラブルはなかったんですが、しょっちゅう、近所の家の

庭にボールを入っては、「ボール取らせてください!」と

宣言をして、他人の庭にズカズカ上り込み、ボールを

探していました。


わざと「ボールを取らせてください!」と宣言するのは、

「そう宣言すれば、勝手に庭に入っても良い」という、

誰が考えたのか分からない「子供ルール」があったから。


今になって考えてみると、いくら無邪気な子供とはいえ、

クソガキに庭に荒らされる覚えはないので、怒られても

当然なんですが、家によって対応が違ったのを

今でも鮮明に覚えています。


まず、北村さんの家にボールが入った場合。

北村さんは、一人暮らしをしていたおばあちゃんで、

子供はいたみたいですけど、その子供に会ったことは

ほとんどなく、数年に1度帰ってくるか帰ってこないか。

だから、僕のようなクソガキにも、孫のように対応してくれ、

よく賞味期限が切れたヤクルトを僕たちにくれました。


続いて、広瀬さんの家にボールが入った場合。

広瀬さんの奥さんは、とても優しい人で、庭に入って

ボールを探していても、「あら? ボールが入ったの?」と

言ってくるぐらい。時には、「これ、お母さんに持って

行ってくれる?」と言われ、何かもらうこともありました。


広瀬さんの家にボールが

入った時の安心感は異常。


そして、最後に椛島さんの家に入っちゃった時。

これは子供心に、一番やっちまった瞬間でもありました。

一番重要なのは、椛島さんが留守であるかどうかです。


留守だった時には、ササッと取ればいいんですけど、

留守じゃなかった時には、いかにバレずに侵入するか。

バレてしまった時には、「バカモ~ン!」ぐらいの言葉を

投げつけられ、兄弟ペナントレースが1週間ぐらい

お休みに追い込まれるのでした。


バカだから、1週間も経てば、

怒られたことも忘れましたがね。


なるべく3塁側の椛島さんの家に入らないように、

僕は小学生にして、まさかの「流し打ち」を覚えました。


大人になった今では、弟と野球することはありませんが、

先日、そんな弟に2人目の子供ができたと知りました。


弟は父親として、どんどん大きくなっているのに、

兄である僕は、いまだにバカに向かって走る日々。

演劇をはじめ、素晴らしい作品を残し、みんなから

「バカ」ではなく、「鬼才」と呼ばれるようになるのは、

一体、いつなんでしょうか。