「俺は今、このクラブの中で

一番ヤバい男に違いない!」。


皆さんは、クラブに遊びに行って、心の中で、

そう思ったことは、ありますでしょうか?


もしかすると、ドラッグをキメ、ブッ飛びながら、

そんなふうに思ったリアルにヤバい人たちも

いるかもしれないんですが、僕は違いました。


渋谷のド真ん中のクラブで、

アジアンの隅田似の女と、

しずちゃん似の女に囲まれ、

まさかのハーレム状態の僕!


普段、まったくクラブに行きそうもないアキバ系の

ニート丸出しの男が、5年前に買ったユニクロの

Tシャツと、8年ぐらい前にお母さんがダイエーの

2階で買ってきたクソダサいズボンを穿きながら、

クラブで一番、いや、この渋谷で一番ブサイクな

2人の女をナンパしているように見える光景!


「ナニコレ珍百景」。


そんな状況になってしまったところ までは、昨日、

お伝えしたんですが、今日は、その続きのお話・・・。



隅田:「何飲んでるの?」

ちだ:「カシスオレンジですけど。」

隅田:「へぇ。じゃあ、私、ウーロンハイ!

しず:「じゃあ、私もウーロンハイ!」

ちだ:「・・・・・・えっ?」

隅田:「えっ?」

しず:「えっ?」


僕:「えええぇぇぇ!?」


何でしょうか、このシステム!

いくらクラブでも、男がオゴらなきゃいけないような

システムにはなってないはずです! ・・・なのに!

ここでアジアン・隅田が、こんなことを言いました。


「アンタ、こんな若い女のコに囲まれて

お酒飲めるんだからラッキーでしょうが?

こんなチャンス、滅多にないでしょ?」


僕の明らかにモテない風貌を見ての上から目線。

ちょっ、ちょっ、ちょっ・・・、っていうか、待て、隅田!

アンタ、自分のことを若いと自称しているけど、

一体、何歳なんだ? 実際、年齢を聞いてみました。


「29歳!」


全力で「アラサー」でした。誕生日を迎えて30歳!

僕が40歳とか50歳ぐらいのオヤジだったら若いと

言えるかもしれませんが、1コ下じゃねぇか!

それは若いって言わな・・・・・・・。


「えっ? 1200円? あ、はい。」


なんて、厚かましい女たちでしょう。

僕のお金で、ウーロンハイ飲みやがりましたよ。


すると今度は、アジアンの隅田と、しずちゃん似の

女がコソコソと2人で話し出し、しずちゃん似の女が

モゾモゾと動いて、「ペンネが食べたいですぅ、

ご主人様ぁ!」と言い出したんですね。


「おい、そこの図体デカいの!」


それをやって萌えるのは、カワイイ女のコだけだ!

しかも、「ご主人様」とか言うのが恥ずかしいのか

知らないけど、言った後に変顔するんじゃねぇ!


たった今、ウーロンハイをオゴったのに、なおかつ、

僕が普段、まったく食わないようなタイプのパスタを

僕のお金で食いやがる気か! だいたい、夜中に

スパゲティーなんて食うから、そんなバカデカい

図体になるんだろうが!


ちょっ! オマエ、しずちゃんのくせに、こっちに

寄ってくるんじゃねぇ! なんで、ブサイクのくせに、

そんなにシャンプーのいい香りがするんだ、バカ!

オマエ、さては風呂上が・・・・・・。


「えっ? 2600円? あ、はい。」


何なんでしょうか、コイツらは。死体に群がる

ハイエナのように、ムシャムシャとペンネを

食いやがりました。だいたい、ブサイクのくせに、

シャンプーの香りで僕を誘惑しやがるとは・・・。

すると、今度は、アジアン・隅田が!


「あれ、お酒減ってなくない?」


当たり前です。のっぺりした「しずちゃん」似の女が

ペンネを食ってる姿を肴に酒を飲むって、一体、

どんなシチュエーションでしょう?


すると、アジアン・隅田似の女は、ひょいひょいと

踊りだし、何を繰り出すのかと思ったら、僕の前で

絶対にやってはいけない禁断のアレをやったのです。


♪飲~んで飲~んで飲~んで、はい、イッキ!

♪飲~んで飲~んで飲~んで、はい、イッキ!


しかも、プロ並みのやつを。


「いやいやいや、そんなんじゃ飲まねぇから!」と僕。

すると、飲んでコールもプロ並みですが、オゴられる

テクニックもプロ並みだったんでしょうか。僕の心に

火をつける『究極の一言』を言い出したのです。


「ノリ悪りぃ! 面白くねぇ!」。


ブサイクと言われようが、気持ち悪いと言われようが、

まったく気にしません。しかし、「面白くねぇ!」だけは

絶対に言っちゃダメ! 一番精神的に来るんですよ!


「飲んでコール」を自らリベンジし、マジックパワーを

吸い取るんじゃないかというくらいの不思議な踊りを

繰り出し、カシスオレンジを喉の奥へと流し込んだ僕。


「おかわり! あと、ウーロンハイ2つ!」


これで、「面白くない!」は撤回できなくても、

せめて「ノリ悪りぃ!」ぐらいは撤回できると

思ったその時! アジアンの隅田が言ったのです。


「ドンペリ開けて~!」


・・・ん? ・・・ちょっ! 何言っちゃってるの?

ご存知だと思いますが、クラブのようなパーティーが

開催される場所で、「ドンペリ」なんて言い出したら、

目ん玉飛び出すぐらいの金額に違いありません!

これはさすがに、ノリとかのレベルじゃねぇぞ!


「ちょっと待て! それはさすがに払えねぇ!」


僕はすぐに言いました。そして、バーカウンターの

お兄さんも、僕があまりに必死なので、「これは本当に

お金が払えないんだな」という空気を察してくれました。


「あっぶねぇ! ここで必死に抵抗しなければ、

うっかりいくら払わされていたのか分からねぇ!」


と、次の瞬間です! なんと、何も言ってないのに、

ドンペリが出てくるではありませんか! しかも!

アジアンの隅田似の女は、そのドンペリを持って、

よく知らない人と乾杯しています!


「えっ? 俺、お金ないよ?」


僕はカウンターの中のお兄さんに話しました。

すると、お兄さんは、「あぁ、大丈夫です!」と

言ったんです。なんだ、僕が払わないと言ったから

隅田が払うのか。っていうか、アイツ、金持ってるなら

最初から自分で払いやがれよ!


そう思った、その時!


「カードある?」


カウンターの中のお兄さんが、僕に禁断の一言を!

僕がさっき、「お金ないよ」って言った時には、

「大丈夫です」って言ったはずなのに、

カードとは、これいかに?


すると、カウンターのお兄さんは、「さっき、あのコが

カードで払うからって言ってたから」と言いました。


ブチッ!


アカン! これは、アイツをぶん殴らなければ!

僕がカウンターの前でウダウダしている間に、

隅田似の女と、しずちゃん似の図体デカい女は、

ステージの前の方にいたイケてるメンズの皆さんと

ドンペリを飲んでいやがります!


「おい! テメエ! コノヤロー! 金払えや!」


ブサイクな女たちを怒鳴りつけるアキバ系の僕。

ヒップホップでノリノリの空気が、一瞬で凍りました。

が、今の僕には関係ありません! コイツがお金を

払わなかったら、僕が払うことになるかもしれない!


「いきなり何ですか?」と隅田。


「俺はオマエにドンペリをオゴってねぇんだ!

そのドンペリ代は、誰が払うんだ、ボケ!」


僕の言っていることは、100%間違っていません。

ウーロンハイと変なパスタは、確かにオゴりましたが、

このドンペリをオゴるとは一言も言ってません!

ところが、これがアウェイというものでしょうか。


「ちょっと、怖いんだけど、何なの、この人!」


アジアン隅田が、みんなにアピールするように言うと、

その場の空気的に、僕が怒ってるキチ●イおじさんで、

彼女は、いきなり言いがかりをつけられて困っている

かわいそうな女のコみたいな図式になったのです!


「せっかく楽しんでるのに~!」

「私、怖いから、もう帰る~!」


表向きは、みんなに「帰る」とか言ってますが、

さすがに本人たちもヤバイと思ったんでしょう。

明らかに逃げようとしているのが、わかりました。


「ちょっと待て! 帰るのか! ふざけんな!

金払うまでは、帰すわけにはいかねぇ、バカ!」


すると、キチ●イにカラまれている女のコを

助けなきゃと思ったんでしょうね。イケてるB系の

お兄さんが、「テメエ、何言ってんだよ!」と言って、

僕の肩を掴んでくるではありませんか!


「いくらヤンチャなB-BOYだろうが、

今の俺を止められるヤツは、いぬフンゴッ!

ヌバッ! ゴッ! ちょっ! やめっ! やめっ!

すんません! すんません!!」


痛タイタイタイタイタイ

痛タイタイタイタイタイ!

ごめんなさいでした!

クラブの隅っこで、なぜか中学校時代の思い出が

鮮明に蘇った僕。31歳にもなって、あの時のことを

こんなに思い出すとは思わんだ!


そして、僕がB-BOYのお兄さんにボッコボコに

遊ばれている間に、ブサイクな女たちの姿はなし!


僕を殴ってきたB系のお兄さんたちに事情を

説明すると、「そういうことだったのか!」と

わかってもらえたんですが・・・。


ヘッロヘロになっている僕のところに、容赦なく

バーカウンターのお兄さんが、レシートのような

紙を持ってやがったんですね! 空気も読まず!


そして、僕はその紙を見て、もう二度と見知らぬ

ブサイクな女には、1円たりともオゴらないことを

心に決めたのです。カワイイ女のコに引っかかって、

こんな結末になったのなら、自分の甘さを反省

できるんですが、これは一体、どうすれば・・・?


バーカウンターが持ってきたお兄さんの紙には、

こんなふうに書かれていたんですよ。


「¥115,000-」。