面白い演劇をやりたい!
これは、僕が放送作家になって以来、9年にわたり、
ずっと抱えてきた小さな夢。高校時代にお笑い芸人を
目指していた僕は、当時、演劇部の部長だった黒川君と
お笑いのプロになろうと思っていましたが、結局、
実力もなければ、センスもなく、やがて月日は流れ、
僕は放送作家に、そして、黒川君は俳優になりました。
「俺がいつかオマエを舞台に出してやる!」
放送作家になってからの僕は、黒川君にそんなことを
言いながら、売れっ子作家になることを目指しましたが、
結局、今日の今日まで、誰からも認められることはなく、
うだうだ生き続けること約9年。その間に僕も黒川君も
30歳を過ぎてしまい、ちょっとしたオッサンになりました。
オッサンになって、いつまでも「夢」とか言っているのも
どうかと思うし、そろそろ現実を見直した方がいいのかな。
ちょうど、そんなふうに思っていた頃だったんです。
このブログで追っていた「ギャルソンカフェ」が
一つの転機になりました。小説家の内藤みかさんと
出会うことになり、内藤みかさんの小説を原作とした
舞台ができないかという話になり、よく考えてみたら、
このギャルソンカフェで働いている人たちは、全員、
役者の卵だったりする現実・・・。
「原作がある」というバックアップに、「既に役者たちが
選べるほど揃っている」という環境。ここで演劇の脚本を
書かない手はあるのだろうか? べつに書かなくたって、
普段通りには生きていけるけど、夢を叶えるんだったら、
こんなチャンス、滅多にない!
しかも、ビックリするようなタイミングなんですけど、
僕はこの秋から、2本ほどメインの仕事が終わり・・・、
ニートになるんです。
環境的にも、ガッツリと演劇に打ち込めるチャンス!
そこで、まずは本当に演劇の脚本を書くことが
できるのか、強力な2人の協力者に、わざわざ
来ていただき、新橋駅前のジョナサンで・・・。
プロット会議を敢行!
プロット会議とは、登場人物の設定や、おおよその
ストーリーを決める打ち合わせのこと。初回なので、
僕一人でストーリーを決めるより、皆さんにアドバイスを
いただきながら、ストーリーを構築した方が、より良い
作品を作れると思ったんです。
実際、本当にたくさんのいいアイディアをいただき、
個人的には、これは面白いストーリーになりそうだと
確信したんですが、一つだけ大きな大きな問題点が
ありまして・・・。
気づいたら、内藤先生の原作とは、
まったく違う話になっていました!
しかも、内藤先生には、「最近のイケメンが出てくる
演劇の主流は、女性を一切出さないというもので、
もし物語に女性が出てくるなら、イケメンが女性を
演じるとか、とにかく、なるべく女性を出さないのが
いい演劇だと言われているのよ!」というアドバイスを
いただいていたんですが・・・。
女性の役までイケメンが演じるということは、
稽古場には、100%男しかいないということになり、
そんな稽古場に毎日のように通うことになるのは、
イケメン好きの女性のテンションは上がっても、
僕のテンションはまったく上がらないため、
女性を出すことを決断!
内藤先生のアドバイスを、あっさり無視する始末!
さらに、内藤先生の小説は、「ホストが出てくる」のが
一つのカラーなんですけれども、僕の中には演劇の
セオリーのようなものがあり・・・。
水商売が出てくる演劇は、
ほぼ100%つまらない。
一番最悪なのは、舞台の設定がホストやキャバクラ。
「私がナンバーワンになるのよ!」みたいなストーリーの
演劇は、ほぼ必ず「ナンバーワンになれるツラかよ!」と
ツッコミたくなるような場末の舞台女優が演じていたりして、
どこか冷ややかな目で見てしまい、まったくストーリーに
入り込むことができないんですよね。
今回も、いくらイケメンが出てくるとはいえ、舞台の上で
シャンパンコールなんてされた日には、寒くて寒くて
しょうがないと思うんです。
これは、お笑い芸人じゃない人がお笑い芸人の役を
やってしまうと、シュールな「間」に襲われるのと同じで、
実際のホストがやる「シャンパンコール」はカッコイイのに、
ホストじゃない人がやると、一気に寒くなるんですよね。
僕の脚本家としての腕が上がり、水商売を面白く見せる
手法を編み出すことができれば、挑戦したいんですけど、
今はまだ、素人と変わらない恐れすらある始末なので、
「ホスト」という登場人物すら怖い始末であり・・・。
内藤先生の看板キャラクターを
登場させないという、まさかの暴挙!
というか、まずは僕がやりたいようにストーリーを
作っていったら、内藤先生の小説に登場する人物が
誰一人出てこないぐらいの物語になってしまいまして、
さすがに、「こいつぁ、ヤバい!」と、プロット会議が
終わった後に、すかさず内藤先生に電話をかけて、
現状を報告してみたんですよ。
すると、内藤先生から、「ちだいさんの好きなように
やったらいいと思いますよ」というお言葉をいただき、
内藤先生の小説のアナザーストーリーのような形で
演劇化するという方向で話が進んだんですけれども、
内藤先生が、僕の送ったプロットを見ながら、ポロッと
おっしゃったんですよね。
「その昔、私の原作が映画化された時に、
原作とはまったく違う話になっていたことが
あるんだけど、その時は、お客さんが私と
私の友達の2人しか入っていなかったことが
あってねぇ・・・。」
(゚Д゚;)ホワッ!!
僕は一瞬で悟りました。きっと、内藤先生は、
このプロットを読んで、その映画と同じ空気を
感じていらっしゃるに違いない・・・。
僕が水商売が出てくる演劇は100%スベるという
空気を感じているのと同じように、このプロットでは、
ほぼ100%スベると感じていらっしゃるのだろう。
しかも、プロの目から見て。
しかし、現段階では、まだなかったことにもできます。
「あれ? 脚本を書くなんて言いましたっけ?」みたいに
することもできる! だから、まずは書くことにしました。
演劇の脚本の第1稿を!
と言っても、今週はいろいろと、こなさなければならない
仕事がたくさんあるので、本格的に書き始めるのは、
今週の土曜日あたりからなんですけどね。
僕のシルバーウィークは、
ひたすら脚本の執筆です。
記念すべき「夢」への第一歩なので、情熱大陸よろしく、
『チダイズム』では、この模様をドキュメンタリータッチで
お届けしていこうと思います。どうぞよろしくお願いします。