この世に生まれて何かを 残したいと感じていた
夢はどこまでもはばたき 未来は光の中へ
永遠に続くそう信じていた空
いま闇に変わる残された刹那の命
赤い血がいつか塗り替えられ 熱い痛みでむしばまれる
引き裂かれてゆくこの日々が怖いよ
目に写るものはすべてが 現実なんだとすれば
もう僕に夢はいらない もう僕に明日はない
けがれた社会の犠牲者達が叫ぶ
遅すぎた愛は心の傷をいやせない
破壊されてゆく身体の中 赤く燃える血が流れる
二度と戻れない平穏だった日に
瞳を閉じれば静寂が胸を刺す
その手を伸ばして僕の体をあたためて
破壊されてゆく身体の中 赤く燃える血が流れる
二度と戻れない平穏だった日に
悲しみの果てに泣き崩れた 忘れないでくれと叫んだ
終わらせたくない命を抱きしめて
「暗闇を着せられた僕」
この楽曲は「薬害エイズ問題」について歌ったものでして、
中学の頃、もの凄い衝撃を受けて、今でも大切な曲の一つです。
未来に夢と希望を持って日常を送っていた人間が、
ある時突然「薬害エイズ」という暗闇を着せられる。
その悲痛な現実を生々しく綴られた歌詞。
彼女の力強いボーカルが心を激しく掻きむしるように訴えかける。
時代は1995年。
利益優先にした背景によって汚染された血液製剤が日本中に出回り、
その結果、多くの人々が薬害エイズに感染した。
川田龍平氏らの被感染者たちは、国、医療の現状に対し真っ向から対決した。
鈴木彩子も「歌」という形で、そのショッキングな現実を訴えた。
それが、この「暗闇を着せられた僕」。
このブログに書くことが、本当は失礼かも知れません。
でも、一人でも多くの人に聴いてもらって、そして考えて欲しい。
簡単な気持ちでは語れないような、そんな楽曲。
今回は彼女鈴木彩子の「愛があるなら」をこのブログに書きたいと思います。
前作「BOROBORO」では、社会風刺や自身の葛藤を今まで以上に色濃く表現してきました。
その流れを汲んで、この「愛があるなら」もそのような性格が色濃く、ストレートに表現されています。
先に書いた薬害エイズ問題についての歌「暗闇を着せられた僕」がその代表格。
そして、イジメ問題について歌った、「長い放課後」。
沈み去る夕日を追いかけて走った
あの砂浜は取り戻せやしないのか
一つの命が奪われたというのに
それでもいつまでも自分だけをかばうのかい
虫けらのように丸まり耐えた気持ち分かるのかい?
獣達の笑い声はこれからも続くのかい?
もう帰れない長い放課後 乾いた風は闇夜の空へ
静かに流れるメロディーと、イジメ現場の描写と訴えの歌詞。
彼女の掠れたハスキーボイスがその歌詞の訴えを更に増幅させる。
社会で問い正される様々な問題に対し、
真っ向から歌という形で立ち向かう彼女の力強さが、
楽曲から感じられ、何とも言えぬ気分になる。
アルバム全体として、前作「BOROBORO」以上にメロディーアレンジにビート感もキャッチーさも増し、
非常にカッコイイ仕上がりとなっていると言う印象。
また、「石ころ」ではホーンアレンジを加えるなど、
バラエティにも富んだ感じもあったりする。
彼女のカッコよさが非常に感じられる、「In The Rain」。
疾走感溢れるメロディーと、勢いが感じられる雰囲気は、
アルバムのトップを飾るのには申し分無い楽曲。
奮い立たせてくれるこの雰囲気は、聞き手を非常に元気にしてくれる。
そんな楽曲。
WALKING IN THE RAIN 激しい雨に打たれたい
WALKING IN THE RAIN 涙も見えないくらいに
WALKING IN THE RAIN もう一度雨に打たれたい
WALKING IN THE RAIN もう一度嵐の中へ
ゴールなんてさ何処だって構わない
OH!虹が見たいから今を生きる
「In The Rain」
そんな、ロックな曲が多く、また刺々しい訴えの歌詞が多い中で、
「心からありがとう」のような、心温まる楽曲もある。
何度も何度も 助け合った仲間に心からありがとう
輝いたあの夢を 分かちあえた時間をいつまでも忘れない
隠してた気持ちさえ 今なら素直に言える心を開いて
君がくれた微笑み いつかお礼をするね
「心からありがとう」
これまでの曲とは声色もかわり、
彼女のロックさを全面に押し出したハスキーボイスはここにはない。
「え?」って思えるぐらいの可愛い歌声へと変わり、
このギャップはまた面白いものがある。
社会に対して疑問を訴えかけるだけでなく、
時には周りに対して、「ありがとう」って思う気持ち。
一時の休まる感覚の楽曲。
そんな楽曲から再び、ハードな楽曲へと移る、「情熱」。
彼女らしい、冷たい都会の中での孤独な戦い、夢を追いかける、
そんな姿を描写する非常にカッコイイ楽曲。
孤独な心震わせ 何処まで走ればいいのだろう
今はざわめくこの街 光を探して生きている
抱きしめていたい情熱を 赤く熱く命を燃やせ
今すぐ君に会いたい
明日の風を翼に受けて 強く高くはばたいて行け
瞳が君を探してる
一人震えるこの夜を 強い雨が打ちつける
今すぐ君に会いたい
「情熱」
ものすごく力強さを感じる、轟音から始まり、ハスキーボイスが炸裂する、
シリアスな雰囲気の楽曲。
シングル曲にもなった曲で非常に前向きで彼女らしい曲、そう感じます。
ぱーっと雰囲気が明るくなり、元気が出てくるような疾走感ある楽曲「Tomorrow」。
大切なものがここにある
傷ついても守りぬきたい
厚い雲を吹き飛ばせたら
探していた自分に会えるから 立ち向かえ
非常に爽快感のある明るい曲で、ラス前にアルバム全体を盛り上げるのにも、
非常に存在感ある、そんな楽曲。
そして、最後はタイトルチューン「愛があるなら」。
静かなメロディーで始まり、力強く、このアルバム全体を総括するような楽曲。
愛があるなら 夢があるなら
大切な世界を君が守ってゆくさ
凍えてるなら 寂しいのなら
大切な思い出を抱いて歩いてゆくのさ
愛があるなら 夢があるなら
大好きなあの日の自分にもう一度会えるさ
愛があるなら 夢があるなら
正直、愛で世界を救うことはできない。
でも、愛で人の心を救うことはできると思う。
そんな人の心の世界を愛で救う、素敵な事ではないかな、とそう思います。
そんな訳で、今回鈴木彩子の「愛があるなら」をブログに書きました。
非常に心打つ、叫びや訴えのような歌詞を書く彼女ですが、
あまり広く受け入れられなかったのは残念かな、と思います。
当時1995年。使い捨てのようなJ-POPが流行する中で、
そんな使い捨てのJ-POPの楽曲も悪くはないし、嫌いでは無いのですが、
そんな中に彼女の楽曲が埋もれてしまったのは、非常に残念でたまりません。
もし、あと5年か10年時代が違ったらきっと彼女の認知は違ったかな、
なんて感じます。
今は「SAICO」という名前でインディーズで活動しています。
また、鈴木彩子名義のアルバムは、BOOK OFF等で手ごろな値段で流通していますので、
もし機会があれば聴いてみてはいかがでしょうか。
愛があるなら/鈴木彩子 (95.06.07)
1.In The Rain
2.Stranger
3.僕はここにいるよ
4.石ころ
5.この星で出会った君
6.迷路
7.長い放課後
8.暗闇を着せられた僕
9.言えなかった言葉達
10.心からありがとう
11.情熱
12.Tomorrow
13.愛があるなら
- 愛があるなら/鈴木彩子
- ¥3,059
- Amazon.co.jp