肌をも透かす程の目映い陽射しの中

彩られた香芳りは色褪せた記憶へ

とろけるようなキラメキに生い茂る甘い果実


涙かき集めた輝くアクエリア

大地(ガイア)天空(ウラノス)が再び交わる夜が来るまで

灼けた砂へ跳び出して瞳の奥の刃を向けた

風を虹色に染めて


むせるような腰付きさ

猥褻な君は女神 海に混ざるアフロディーテ


お盆も過ぎて涼しくなり、夏ももう終わりですが、

夏になると必ず聴きたくなる曲の一つです。

非常にマイナーな曲ではありますが、

MASCHERAという10年前のV系バンドのインディーズ時代の曲、

「真夏の女神」です。


キャッチーでかっこいいバンドサウンドに歌唱力あるMICHIのボーカル。

そして、真夏のビーチを思わせる開放的な歌詞。

時々見せる裏声がまた面白い楽曲の作り。

V系にエロ歌詞は結構定番ではあるのですが、

このMASCHERA、なかなか歌詞でエロを出す事はなく、

これだけ直接的なのはきっとこの曲が初じゃないのかな?

「浜辺での一夜の恋」を歌うような歌詞なのですが。

どちらかというと、インディーズ時代はファンタジーやら耽美的な歌詞が多く、

この曲の中でも結構強引に「ガイア」だの「ウラノス」だの「アフロディーテ」と、

神話に登場する神の名前を使ってきます。


今回は、このMASCHERAのインディーズベスト、「tales」をブログに書きます。

リリースされたのは97年。正にV系全盛期。

この頃、私もV系に非常にハマっている時期でして、

このMASCHERAも同様、黒夢、Penicillinとともに好きなバンドの一つでした。

ポップでキャッチーなバンドサウンドと、

V系にしては非常に厚みがあり、歌唱力のあるボーカルが好きで、

インディーズ初期からCDで聴いていました。

メジャーデビュー後、歌詞は路線変更し恋愛中心になります。

非常に歌唱力もいいボーカルで、楽曲もキャッチーなものが多いものの、

なかなかブレイクするチャンスに恵まれず、

最も売れたのが[ekou]というシングルで最高位33位。

ドラマの挿入歌に使われた曲です。

その後、アルバムを1枚出してから耽美な歌詞に戻るが、

アルバムを1枚、ベストを1枚出して解散。

非常に残念な終わり方でした。


そんな彼らのインディーズ最高傑作の一つで、

インディーズ唯一のシングル曲である、「運命の車輪」。


ああ死をも恐れぬ勇者のよう

唱い続けることはできるのか

地図を失った旅人の果ては

この瞳には映らなくて


一粒の光を此処へ 伝説の魔性

開け放つ者は何を償うのか


Stranger in my heart...

Stranger in my heart...


歌詞を書いても、内容がさっぱり意味分からんのですが、

非常にキャッチーなバンドサウンドで構成された楽曲で、

歌詞と合わせて聴いているとカッコイイ。

きっと当時の音楽シーンであれば十分通用していたのではないか、

なんて思えてしまいます。


そんな彼ら、基本的にインディーズ時代の楽曲の歌詞には、

深い意味なんて全く無いんじゃないか?と思えるような、

狙ったかのようなダークで耽美な歌詞が多かったりします。

特にインディーズ初期はそういった楽曲が殆どで、

歌詞にメッセージや意味を持たせたのはインディーズ末期頃からでは?と。


手足さえ縛られた

干からびた骸の群れ

快楽へと闇の中で踊り狂う


呪縛から解き放たれ

自由をこの手に治めて

物憂げに太鼓の記憶を闇へ映す


「DANCE IN THE SHADOW」


ベース音で始まるイントロと、終始ダークな雰囲気に包まれる、

好き嫌いは分かれるだろうが、カッコイイ楽曲。

歌詞はもう、ベタベタな感じで意味不明。

ダークな雰囲気があればカッコイイという当時の風潮を、

見事に反映したかの楽曲。

といっても、結構好きなんですがね、この曲は。

彼らのデモテープで、後にCD化された「ca・tas・tro・phy I」に収録された楽曲。

まぁ勿論IもあればIIもあり、アルバムの雰囲気はいずれも一緒。

歌詞の書き方も勿論一緒。


ドラム音と歯切れのいいギター音のイントロから始まる、

疾走感溢れる「BLUE MOON KISS」。


失われた記憶の数だけ 囁かれた秘密の数だけ

夢は永遠に終わらない 甘く・・・

夢はあなたの命さえ けした・・・


ちりばめた星屑の中に

あなただけが私を呼び起こす


blue moon kiss to you ...

blue moon kiss to you ...


こちらも同様「ca・tas・tro・phy I」に収録される曲なのですが、

インディーズ初期にしては非常に完成度が高いのではないか?

って思えるような素直にカッコイイって思える楽曲。

非常に単調ながらも、だからこその聴きやすさがあって、

この曲は私にとって結構好きな曲だったりします。


そんな具合で、歌詞がいまいちよく分からないながらも、

実力や厚みのある歌唱力でファンを集めていくMASCHERAですが、

そんな彼らの楽曲にも後期になるにつれて歌詞に世界観が見えてくるようになって、

「魅惑」なんてそんな兆しが現れている楽曲じゃないかなって思います。


途切れた景色を拾い集めて繋いでみても

瞼に映るあなたの顔は醜い道化師の姿

ずっと変わらないあなたのぬくもりに包まれていたかった

くすむことのない瞳に抱かれていたい 抱かれていたい


So long without you...

耐えきれない寂しさの中

泥だらけの俺が

薄れ行く意識の中

奪われた心の・・・


歌詞、メロディーと楽曲全体に広がる物悲しい雰囲気や、

途中シャウトにも似たMICHIの気持ちのこもった声など、

これまでの耽美的であったり、ダークであったり、

また、ファンタジーを臭わせる楽曲とはまた一線を引いた感じがします。


そして、ラストを飾る「WAIT」。

ラストを飾るに相応しい、スカッとした感じのノリの良いメロディー。

LUNA SEAで言うところの「WISH」や「STAY」に似た感じの位置付けでしょうか。

前作の「PRETTY NEUROSIS」でも、「Lasting...」という同様の存在感を持つ名曲があり、

これはメジャー最後に出したベスト盤にも収録されました。

こういう楽曲って本当に何度聴いてもいいんですよね。


無くした物ばかり多すぎて

手にする物はもう何もなくて

今日を生きてゆくだけの自分さえも

居なくなってしまいそうな現実


殺した想いはもう届かない...消えてゆく

捜し求めた理想の裏側に虚しい戯曲が響き

突き刺さる旋律が胸の中

終わらないメロディーを創り

居場所のない俺の心だけが

永遠の眠り瞳を閉じた


I get away from it all I'm seeking pleasure

I get away from it all ...

何もかも壊してゆく

何もかも崩れてゆく


この曲はMASCHERAで本当に好きな曲です。

やけに明るいノリのいい曲とは裏腹に、

絶望的で落ち込んだような歌詞。


このベストは年代順に曲が並べられているのですが、

こう見ていくと、MICHIの作詞や、曲に持たせる雰囲気っていうのが、

インディーズ後期に非常に目覚ましくレベルアップしているように感じられます。


そんな感じで今回MASCHERAのインディーズベスト「tales」を書きました。

MASCHERAは解散して大分経つのですが、今でも時々聴きたくなるアーティストです。

V系の衰退とともに彼等も同様の道を辿ってしまったのですが、

本当に勿体ないな、って感じます。

是非、彼等の楽曲は一度聴いてみることをお勧めします。

ボーカルの歌唱力はあると思うのですが、

若干クセが強いので、好き嫌いは分れるかもしれませんが。


tales / MASCHERA (97.09.24)


1.DANCE IN THE SHADOW

2.SLAY

3.BLUE MOON KISS

4.万華鏡の中で・・・

5.CASTLE OF ROSE

6.LA MASCHERA

7.PARAFFIN FETISHIST

8.DEN-NO [BRAIN SEED ver1.0]

9.ラー

10.刹那1995

11.運命の車輪

12.真夏の女神

13.魅惑

14.愛、碧水に漂う・・・

15.WAIT


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