それは とても晴れた日で

未来なんていらないと思ってた

私は無力で 言葉を選べずに

帰り道のにおいだけ 優しかった

生きてゆける

そんな気がしていた


教室で誰かが笑ってた


それはとても晴れた日で


「Raining」


昨日の午前、仕事の用事で外出していた時、

偶然ラジオからこの曲が流れてきました。

Coccoの「Raining」。

優しく暖かなスローテンポの明るい曲に乗るのは、

周りの環境に傷付き、葛藤する思春期の少女の心のような、

聴き入るたびに切なくなってくるこっこの歌詞。


髪がなくて今度は 腕を切ってみた

切れるだけ切った

温かさを感じた 血にまみれた腕で

踊っていたんだ


こんな聴いていて耳を塞ぎたくなってくる、

切なくて痛々しい歌詞も含まれています。

でも、最後の曲の盛り上がりやサビの歌詞は、

そんな少女の心の闇に何処か光が射すようなイメージ。

綺麗で柔らかな歌声で歌い上げる彼女の楽曲は、

間違いなく、彼女にしか作り出せない空間です。

Coccoの曲、特に活動休止前のものを最後に聴いたのは恐らく1年以上前だったので、

その時はただ懐かしく感じ、「やっぱり、いい曲だな」と聴き入っていました。


今回は、この「Raining」が収録されたCoccoの2ndアルバム「クムイウタ」を、

ブログに書きたいと思います。

リリース当時1998年、私は高校3年生の頃だったのですが、

この頃Coccoは、私の中では余り気にしていない存在でした。

ただ、ヒット曲「強く儚いものたち」を知っていた、という程度でした。

でも、大学時代に彼女の曲をしっかり聴く機会があり、

彼女の楽曲の虜になりました。

そのアルバムが、この「クムイウタ」です。

彼女の優しく暖かなメロディーに、柔らかな歌声が絡まる楽曲は、

一見、「癒し系ソング」の様に聴こえますが、

実際は焦燥感に駆られるような、

更には痛々しくて耳を塞ぎたくなるような彼女特有の歌詞が多く、

「癒し系」とは全く対極にあるような雰囲気のものばかりです。


羽ばたくように 落ちてゆくわ

夢見るように 堕ちてゆくわ

だって私は凍えているのよ


赤くしたたる揺籃(ゆりかご)の柘榴(ざくろ)


「濡れた揺籃」


アカペラの1曲目「小さな雨の日のクワァームイ」から一転して、

ヘビーなギター音と共に重々しい雰囲気に包まれ、

こっこが刺々しく感情を込めてハードに歌い上げるこの曲。

堕落や絶望が襲い掛かるような、救いようが無いイメージの歌詞。

冒頭から圧倒されます。


そうよ飛魚のアーチをくぐって 宝島が見えるころ

何も失わずに 同じでいられると想う?

きっと飛魚のアーチをくぐって 宝島についた頃

あなたのお姫様は 誰かと腰を振ってるわ


人は強いものよ そして 儚いもの


「強く儚いものたち」


柔らかに、緩やかに流れる明るい曲とともに流れる歌詞は、

やはり、彼女の「現実を訴えかける」ような、寂しげな歌。

自分の夢を追いかける歌と言うのは、沢山あるけれど、

そんな曲に対して、現実を突きつけるアンサーソングのような、

悲しく寂しげな雰囲気。

描いた夢に向かって彼女を置いて飛び出す姿はいいけど、

実際その間彼女は彼を信じて綺麗なままで待っていられると思う?

そんなもんじゃないよ、現実は。

というような感じでしょうか。

ストレートで、でももの凄く深い歌詞です。

彼女の代名詞ともいえるシングルヒット曲でもあります。


暮れていく毎日も止められず

怖いのはふくらんでいく乳房

胸をかき鳴らす 砂埃

多分 全ては からまって

風に押されて 走ってた


「うたかた。」


バイオリンとビオラ、チェロのイントロと共に緩やかに流れるスローテンポの綺麗な曲。

この綺麗な曲に乗せて流れるのは、成長する思春期の脆い心を綴ったような歌詞。

柔らかに、か細く歌う彼女の歌声が絡み合って、

落ち着いて聴いていられないような不安定な雰囲気を感じます。

でも、その雰囲気が彼女の作り出す世界観なんだな、と。


抱きなれた この体を 探したりしないで

傷つけた この体を 探したりしないで

吐き捨てた 言葉など 踏みつぶして消して


もうここには何も 残ってないの

何もないのよ ただ吐き気がするの


「裸体」


私が大学時代に彼女の曲で一番好きだった曲。

でも、上の歌詞を見れば分かるとおり、

「好き」なんて軽々しくはいえない曲でして。

ひたすらダークな雰囲気に包まれる楽曲、

そして、間奏に響くこっこの絶叫。

絶望に包まれた、女性の心内を語った、

もの凄い迫力ある、圧倒される楽曲です。


気が付くと私は 独りあなたを探していた

体からこぼれる 熱は行き場さえ失くし


目隠しで彷徨う


「夢路」


緩やかに流れる、暖かで明るいメロディーには、

失恋した女性の絶望的な歌詞が流れ、

それを彼女がやわらかく歌う。

歌詞を全然考えなければ癒し系に近い感じの楽曲ですが、

そんな「癒し系」とは対極にあるような楽曲です。


大きな森を 気が遠くなる程の

ころがる星を 切り刻まれて光る

そのかわいい胸を 抱いておやすみ

「ウナイ」


このアルバムのラストを飾る、

静かで緩やかなメロディーと、

どこかファンタジックな童話のような歌詞。

「耳朶からイルカは 海を見た」

「桃色の象が運ぶ 夢を見なさい」

という表現は何か意味深な感じがします。

とても幻想的で、素敵で、

涙を誘うような感じがする楽曲です。


と、Coccoの「クムイウタ」を今回はブログに書きましたが、

こういう中身がもの凄く深い感じのアルバムと言うのは、

余りに表現が難しくて、伝えたい内容がなかなか出てこないものです。


Coccoの楽曲は女性からもカナリ人気があり、

もし、聴いたことが無い方が居たら、是非じっくりと聴いていただきたいかな、

なんて思います。

個人的には、活動休止前までの、彼女の生々しい心情を語ったような、

息苦しくなるような雰囲気の楽曲がもの凄く好きでして、

今回のアルバムのほかに、

1stアルバム「ブーゲンビリア」

3rdアルバム「ラプンツェル」

4thアルバム「サングローズ」

とリリースされていて、大学時代良く聴いていました。

それぞれのアルバムにそれぞれの世界観があって、

引き込まれるように聴いていただけるのではないかな?と思います。


クムイウタ / Cocco (98.05.13)


1.小さな雨の日のクワァームイ

2.濡れた揺籃

3.強く儚い者たち

4.あなたへの月

5.Rose letter

6.My Dear Pig

7.うたかた。

8.裸体

9.夢路

10.SATIE

11.Raining

12.ウナイ



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