「惻隠の情」
リーダーシップを学ぶ皆さんは、周囲の方とよりよい人間関係をつくりたいと思っているでしょう。そこで、「惻隠の情」という考え方を身につけることをおすすめします。今回は、惻隠の情について考えたいと思います。
惻隠の情とは、相手を気の毒に思う気持ちです。相手の方に不幸があったときに、その方の前でむやみに笑わないとか、一緒に悲しんだりします。他には、思いやりの気持ちと考えても良いでしょう。
人生を振り返れば、今まで多くの方の気持ちを害してきたと思います。自分で気がつけばまだよいのですが、気がつかなければ、知らず知らずのうちに相手を傷つけて、そのまま時が過ぎています。それでも、周りの人たちは、私の至らなさにも黙って陰で支えてくれているはずです。本当に有難いことです。ですので、常に感謝の心を忘れない様にと心掛けています。
数年前の話ですが、居酒屋で数名の社員と会食中に、その場にいない社員のTさんに聞きたいことがあり、私は賑やかなお店からTさんに電話を掛けました。元気な声で「Tさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今大丈夫?」と聞くと、Tさんは一言「今、お通夜中です」。私は謝り、後日聞きますと言って電話を切りました。
数年後Tさんは退職されました。その後、同僚に「お通夜のときの電話の用件を、未だに室舘代表から聞いていない」と話があったそうです。本当にショックでした。お通夜のときに電話をしてしまったこと。後日聞くことを忘れていること。リーダー失格だと思いました。
それ以降、社員の身内の不幸は、お通夜と告別式の日時など、全社員にメールし共有するようにしました。今でもまだまだ気配りが足りませんが、以前よりは良くなってきたかと思っています。
最近、友人の美容室が15周年を迎えました。お店でホームパーティーのようなことをやるからと、私も誘われました。パーティーの前に、着物の集まりがあったため、そのまま着物で行きました。すると、友人も奥様も大変喜んでくれました。各人が持ち寄ったお料理やらお酒やらが、テーブルからあふれるほど並んでいました。
以前からの知り合いも多く、「今日はマジックやるの」「お料理食べてね」「お酒たくさん飲んでね」と歓迎してくださいました。料理を食べると「これは俺が作った角煮」「これは私が作った酢の物です」と教えてくれます。「美味しいね!」「上手だね!」と盛り上がっていると、持ち寄った人が感想を聞きたそうな雰囲気を感じました。
食べ続けているとお腹がパンパンになりました。もう何も入らないなと思っていると「私のピザが人気ないなぁ」という声が聞こえました。一瞬迷いましたが、ピザを口に運ぶとうまい! 持ってきた方は嬉しそうに笑っていました。
「喜んでくれるかな」と料理を作っているときの相手の想いを想像しながら食べていると私の周りは笑顔であふれていました。お腹はキツかったですが、本当に幸せな気持ちになれました。「着物で来てくれて有難うございます。お陰様で華やかな会になりました」と従業員さんも喜んでくれました。
自分のことを考えたら、カジュアルな服に着替えて参加したでしょう。会を少しでも盛り上げられないかなという心が、着物での参加を選択したのです。
思いやりの気持ちが、巡り巡って自分を幸せにしてくれるのだと感じる経験でした。
今月のコラムから感じたこと
相手の立場にたって物事を考える、相手はどんな思いでしてくれたことだろうかと想像してみる。
頭ではわかっていても、なかなか行動に移しきれない今日この頃です。
相手はわたしに、何を伝えたいんだろう? どんな気持ちで伝えてくれているんだろう?
その行動は何がきっかけだったんだろう? と、自分本位ではなく相手目線で考えてみたら、もっと心穏やかに過ごせそうです。