エアライン業界を目指す人の多くがそうである様に、私も例にもれず大学時代、ホテルでアルバイトをしていた

私が配属されたのは、着物を着てサービスを提供するお店で、私はアルバイトをするのも初めてなら、着付けを自分でするのも初めてで、怒られてばかりのそれはもう大変な毎日を送っていた

しかしさすがは関西でも有名な一流ホテル
そこには当時の私には響かなくとも、今になって思えば、いや今になって初めてわかるサービスの極意があった

ある日私はお客様の目についてしまう場所に、さげたお皿をいっぱい乗せたカートを置きっぱなしにしていた 
いけないとわかってはいたものの、そこまで手が回らなかったのだ

即座にマネージャーに呼び出された私は、怒鳴られるのを覚悟で下を向いていた
すると彼は私が予測もしていなかった言葉を残し、すぐにその場を去っていった
しかしその言葉こそ、サービス業を目指す私にとって後に大きな気づきをもたらす事となる

 「非日常!!それがホテルです!!」

非日常??一体何それ??
私はぽかーんと口を開けたまましばらくその場に立ち尽くしていた
要は今すぐ片付なさいって事だよね・・?

私の母はパティシエをしている
自宅での料理教室、某企業での専属講師、50代以降は夢であったカフェを始めたりと、その活躍の場は広い
そんな彼女の影響を少なからずや私は受けている・・・と最近気づいた(笑)

殊に自宅での料理教室においてそれは顕著だ

当時中学生だった私は自宅が教室(職場)兼 家というのを、思いのほか厄介に感じていた
自宅には自分の知らない多くの方々が集い、どこからがプライベートなのかもわからなくなる
レッスンが始まると私は自分の部屋に追いやられ、終わる時間までひたすらじっとしていなくてはならない

その日も急いで朝食を済ませ、自分の使ったお茶碗とお箸を洗い、そそくさと言われる前に自分の部屋へ上がろうとしていた
すると、母が言った

「ちょっと、食器はちゃんと片付けてよね」

要はこういう事だ 私は洗ったまま食器を伏せてシンクの棚に置きっぱなしにしていた
全て片づけて初めて洗いものは終わるという母の教えにこれは反している

しかし、そこには彼女ならではのある美学があった

「あのね、私は夢を売る仕事をしているの
 お菓子を作っている時は皆、日常の悩みや嫌な事も全て忘れて少女に戻っている 
 その夢の空間にお茶碗やお箸が転がっていたらどう思う?一気に現実に引き戻されるでしょ?」

なるほど、彼女のポリシーは徹底していた

私は埃ひとつない家で育ち、自宅のインテリア等は全てアンティーク調で統一される等、そこにはよくある一般的な家庭の臭いはなかった

彼女は普段から「非日常」という夢の演出に余念がなかったのだ

私はよく人から「生活感がない」と言われる
実のところ私ほど所帯臭い人間もいないと思うのだが(笑)もしそう思ってくださる方がいるとするなら、恐らくこの家庭環境に起因するものだろう

又GSやCAから生活の臭いを感じる方もあまりいないのではないだろうか?

空港にはいつも出逢いや別れ等の数々のドラマがあり、機内は異国の扉を開ける前のわくわくドキドキの夢の空間だ
それを演出するのがエアライン業界で働く人達だとしたら・・・・

私もそんな「非日常」を創る一人として、アルバイトを通して、又家庭環境を通して得た力を自然と発揮してきたのだと思う  そしてそれはこれからもずっと・・・