先日ある人がこんな話をしてくれた

「新幹線と飛行機、どちらにもよく乗るけれど、サービスをしてくれる人達の決定的な違いは、やはり覚悟があるか・・・だろうね 
新幹線は所詮地面を走っている でも飛行機はそれとは違うから」

業界違えば見る視点も違う・・・とは正にこの事
私達が普段当たり前と思っていた事に鋭いメスを入れられ思わずはっと気づかされる事しばしば・・・

この「覚悟」について・・・
新幹線(鉄道)業務に携わる方々にそれが欠けていると言うわけではなく、私が思うに「覚悟」の種類・意味が又違ったものとなるのではないか・・・

航空業界、殊にCAと言うと、何かしら「マナー教育」に重点をおき・・・というイメージがつきまとうが、実のところ「エマージェンシー」に関する事が訓練の大半を占める

そこには気圧の変化を伴う、ある種特殊な環境下で、多くのお客様の命をお預かりするという「保安要員」としての役割が何より重要という事実が根本にあり、面接試験においても通常の一般職と違い、「圧迫面接」の傾向が後を絶たないのは、やはりあらゆる面でその「覚悟」を試しているからではないだろうか・・・?

カナダから帰国後、私は(新卒の時に通っていた所とは又別の)エアラインスクールに入学した
私が在籍していたのは「外資系エアラインコース」というコースでその名の通り外資系の航空会社を目指す方々が集まっていた

入学してすぐ私は「英語面接」の担当教員がいわゆる英語を母国語とするネイティブスピーカーではないことに愕然とした
その先生は台湾人で元シンガポール航空のCAだった

しかし「何だネイティブじゃないんだ・・・」という当初の私の考えは即座に払拭された

今思えば本格的にCAとして乗務をする前に私はこの先生から「覚悟」の本当の意味を教わった様に思う

このブログでも幾度となく触れているがCAという職業のステイタスは各国で大きく異なる
日本でも未だにCA神話が残ってはいるものの、今となっては数ある職業の一つに過ぎない
しかしこれが韓国・中国となるとその差は歴然だ

台湾出身のその先生は、自らがCAとなった事で家族を養えるほどの経済力と地位を得、生活費はもちろん兄弟の学費まで面倒を見て来たという苦労人だ
そこからして彼女の「覚悟」は甘ったれた日本人とはどこか違っていた

又感情表現にもアジア人特有のストレートさが感じられ、入学して間もなく
「私はクラス全員の面倒を見ている時間はない chiakiにかけるから必ず結果を出して!」とハッキリと言われた(「選ばれるという事 選ばれないという事」参照)
そして私もその期待に応えようと全力を尽くしていた

ある日の授業での事
極寒のカナダから帰国したばかりの私は日本の気候に身体が上手く適応できず、又極度の睡眠不足と疲労も手伝ってか、体調不良がずっと続いていた
その日は咳が止まらず、周囲の人に申し訳ないと思いつつ、授業に出席していた
案の定先生のゲキが飛ぶ

「chiaki 貴女この間も風邪ひいていなかった?なのに又ひいている 理由を説明して!!」

「申し訳ありません・・・・」

「何回風邪ひいたら気がすむの?皆の迷惑になるから出て行って!」

「いえ、いさせて下さい!!」

「帰りなさいって言っているでしょ!!自己管理も出来なくて、どうやってCAになるつもり?」

こんなやり取りがどれくらい続いただろうか・・・・
(最後まで授業には残りましたが・・・)

帰国後、最後の力を振り絞って「これが私の留学生活の集大成!」と言わんばかりに毎日を必死で生きていた私は、心の中で「もう少し温かい言葉をかけてくれてもいいのに・・・」と悲しい気持ちで一杯になった

その反面、マルチカルチャーのカナダで多くのアジア人と接して来た私は、殊に中国・韓国人に代表される発展途上国の方々が持つ特有のハングリー精神を目の当たりにし、その姿を通して日本人が忘れかけていたエネルギーを学んだ事から、いつしか「この人に認められるまでは・・・絶対に負けられない!!!」 「この人について行けば間違いない!」そう思う様になっていった

当時先生は私の事を何かにつけて
「Spoil Child」と呼んだ

Spoil Child :直訳すると「甘ったれた子」とでも言うべきか・・・

先生にそう言われる度に「私は甘ったれなんかじゃない!」「私は甘えてなんかいない!」そう心で叫び続け努力を重ねた

当時メール等がない時代だったので、授業を終えた後の先生とのやり取りは、ひたすらFAXだった
英語での書類作成や一問一答は気が遠くなるほど私には難問で、昼夜問わずやり取りする中で私は先生のご自宅のFAXの感熱紙を全て使い果たしてしまうと先生に呆れられた

そうして掴んだ念願の航空会社の内定は決して私一人で手に入れたものではなく、先生との深い絆によってようやくたどり着いたものだった

内定後、私は母校であるそのエアラインスクールの内定者講話にゲストとして呼ばれた
多くの後輩たちの前で、メッセージを述べるというものだが、先生はその席で私をこの様に紹介して下さった

「ノースウエスト航空に内定した伊藤千暁さんです 世界一の頑張り屋さんです!!」

世界一の頑張り屋????それって私の事?
先生は私をそんな風に見て下さっていたなんて・・・・・

「甘ったれ! 甘えっ子! こんな弱虫見た事ない!!」

そう言われ続けたあの頃・・・

私はこの時初めて先生の厳しさの奥底にある本当の優しさを知った

そして、世界へ飛び立つ前に「覚悟」の持つ本当の意味を学んだのだった