タイトルの TINY DROPS を直訳すると【ほんの小さな雫たち】。
人の命を雫に喩えて人生の終わりをテーマにしたバラード。
したがって内容は死別を想起させるものになっています。
おそらくここまで強く死を意識した詞は B'z の楽曲にはないでしょう。
この楽曲のメロディが誕生した経緯についてボスは「親しい人が亡くなって、夜中その人のことをずっと考えていたら、夢なのか起きてるのかわかんないんだけど、メロディーが鳴るんですよ。4時半くらいでもう起きて、ギター持って録音しました」と語ったそう。
また雫を命の比喩にした歌詞について稲葉クンは「サーフィンをするために海に行った時に出会った、サーファーの男性との会話の内容を基にしている」と語ったそう。
雫を命の比喩にしたことはイナバイズムにおける水の概念に合致します。
詳細は前記事等に記した通り。
本作品に限らず、稲葉詞にはずいぶん前から人の命を雫に喩えた詞がありましたから特別驚くことではありません。
しかし、普段詞に関して口を挟まないボスからのオーダーによってレクイエムになったという経緯は非常に珍しいパターンで特筆すべき点だといえるでしょう。
本作品は比喩の意味さえ理解していれば比較的わかりやすい詞になっています。
ですから本稿では本詞の好きな考え方を示しているフレーズについて記してゆきます。
それほど多くもないんですけど(汗)
まずこのフレーズから。
『人生は去りがたいもの いろいろあっても』
どこが?って思われるかもしれませんね(笑)
人がその人生の最期を迎えるにあたって「人生は去りがたいもの」と本当に考えるものなのか?
私にはまだ理解し難い感覚です。
いろいろ考えさせられるフレーズでもありますがその分深く心に刺さるフレーズでもあります。
『かけがえのない あなたに言いたい 心から ありがとう 旅を終え 生まれた場所に 戻るあなたに 手をふろう 精いっぱいの 手をふるよ』
大切な人を失ってただ哀しみにくれるだけでなく、「心からありがとう」と言える人になりたいものです。
逆に自分の時にもこうして思ってもらえるよう生きたいとも思いますね。
また「生まれた場所に戻る」という考え方も大好きです。
『会えないのは こわいけれど それは変えられないこと いつか皆 そこに行くから その日までのさよなら ほんのつかの間のさよなら』
「会えないのはつらいけれど」ならわかりますが「会えないのはこわいけれど」という表現はあまりしませんよね。
こう言われて改めて想像してみるとたしかに怖いんですよね、いろいろな意味で。
これは今後の覚悟として心に残るフレーズです。
また「産まれた場所」と対になる「いつか皆そこに行くから」という考え方ももちろん大好きです。
しかし忘れてならないのは本詞はおそらく天寿を全うした人へ向けられたレクイエムだろうという点です。
大切な人を突然亡くしたとしたら、果たしてこのように考えられるのか?
大切な人を理不尽に奪われたとしたら、果たして同じように考えることが出来るのか?
感情のコントロールが出来なくなるほどの状況で本詞のように穏やかな感情でいることは非常に難しいと思われます。
しかしこういう死生観を持つことは故人をも幸せに出来るのではないかと思います。
もし大切な人がある日突然居なくなったとしても、いつか…いつかこんな気持ちで送り出してあげられたらお互いが幸せになれるような気がします。
幸せというのも不謹慎かもしれませんが…
誰に、いつ、どんなことが起きるかなんて誰にもわかりません。
しかし死はすべての人に平等に訪れます。
今のところはまだ…ね。
みんないつかそこへ還るって考えられたら少しは哀しみも和らぐのかな?