「ブルー・ベルベット」 出演/カイル・マクラクラン、イザベラ・ロッセリーニ、デニス・ホッパー、ローラ・ダーン 他

◆舞台はアメリカの田舎町。ある晴れた日、突然倒れて入院した父を見舞っての帰り、
大学生のジェフリーは、野原で切り落とされた人間の耳を発見する。
その耳の謎を解こうと、同級生で恋人である刑事の娘サンディとともに調べを進めるうち、
キャバレーの歌手ドロシーの存在を知る。ジェフリーは彼女に接近し、
その魅力の虜になると同時に次第に奇妙な世界に入り込む。

オススメ度 ★★★★★★★★★★10

◆リンチが、もはや十八番となった、人間の狂気と異常性を悪夢のような美しい映像と織り交ぜて魅せる例の得意技(笑)を遺憾なく発揮し始めた最初の作品ではないでしょうか。「イレイザー・ヘッド」も狂気満載ですがやはりカラーとそうでないのとでは全くイメージが違います。
冒頭から流れ出す、澄み切った青空、綺麗に刈られた明るい緑の芝生、白い垣根のある家、真っ赤な花、そしてボビー・ビントンの「ブルー・ベルベット」の歌声。物凄く平和そうなその映像が、恐ろしく不安を掻き立てる前触れに見えてしまうのがリンチのすごいところ。そしてやはりストーリーはエロティシズムとシュールと暴力がない交ぜになったとんでもない展開に(笑)。
ドロシーの夫役で登場するデニス・ホッパーが、気の狂った悪役を熱演してるのがまたオソロシイ。最終的にはハッピー・エンドで終わりますが、しかしいつ何時また恐ろしい世界に踏み込んでしまうかしれない、とても身近なところに悪意は潜んでいるとでも言いたげな内容は下手なホラーよりよっぽど恐怖心を煽ります。
唯一爆笑できるのは、カイル・マクラクラン演じるジェフリーが恋人と道を歩いている時唐突に「にわとりのマネ」をし始めるシーン(笑)。(02/9)