私は いつ貰ったかは覚えてないけど、それからずっと ずっとそばにいてくれている シロクマのヌイグルミがある。この子無しでは今、眠れない。

父親がロシアに出張したお土産だった。空港の到着ロビーで早く会いたくてソワソワしていた私だった。 すると 一見すると 完全にマフィアか893にしか見えない 背がデカくてサングラスをかけて帽子をかぶり 赤にも緑にも光の角度で見える色の変わるロングコートを着た男性が。
片手には革の鞄を、もう片方の手に、シロクマを。

恐いけど、シロクマ… 気になって ずっと見てた。

自分の荷物を受け取り、ゲートに向かってくる。

わ、こっち来た!!と思い 見てた事を悟られないように お父さんを探すガキを演じた。

『ただいま、●●ちゃん!』

振り向くと私の鼻先にシロクマの鼻先。
マフィアはうちのオヤジだった。

いっつも 家では作業ズボンみたいなのの下に薄くなったモモヒキを履き、これまた薄くなった毛糸のお母さんの手編みの靴下を履いている、お父さんだった。

何よりも 魚のウロコまみれのカッパと長靴が似合う 私のお父さんだった。

控えめに言っても、自分のお父さんは 最強に格好良い。お母さんは めっちゃ可愛い。

だから私は、自分の両親を 見え見えの世辞や社交的に褒められても、『ええ、素敵ですよ。』と応える。

それを言うと オヤジは困ったように、『馬鹿だなお前はホントに』と笑い、母親は『アンタ馬鹿だよ全く!恥ずかしい。』と言う。

それでも私は『だって私はそう思ってんだからしゃーねーじゃん』と開き直る。
『そんなことないですよぉ』ってか?そんなんで美徳だか謙虚だかの価値があんなら そんなもん10円で売ってやんよ。
親 格好良いっつって何が悪い?自分から自慢する訳じゃない。『お父さん素敵ね』『お母さん素敵ね』って言われるから、思った通り『はい』っつってるだけだ。格好悪いことだって 心底腹立つ事だって あるに決まってる。『お父さん恐いね』って言われりゃ『はい』って応えるよ。だってそうだもん。恐ェし実際w
そんな私は 悪い意味で新人類とか言われてる。
分かってんなら訊くなよボケ。w

私は『オヤジみたいに格好良い●●になりてんだ!』とか言うヤツらが大好きだ。私は別としても、そういうヤツらの顔はキラキラしている。

謙虚 に縛られた人間よりもね。

シロクマの名前は『ダディ』。性別不明の、私の宝。
早起きは三文の得。 なんて、一体誰が言い出したんだ。
そいつがたまたま早起きしたら 良いことが重なったってだけじゃないか?

私は悪いけど否定させてもらうよ。

高校の3年間は、エブリデイ早起きだった。5時半。
部活の朝練なんかあった日には、キツいなんてもんじゃない。そんなんだから 授業は始終トリップ。 ベテラン教師に ドラムを叩く棒で思い切り頭をやられたこともある。まぁ そんな一撃も 3分ともたずにまたトリップしちゃうんだけど。

今日もそうだ。たまたま早起きしたら、静かに朝飯も食えない、食ったら 家事をやらされ 挙げ句に今回の津波でやられた家の修復まで手伝わされる。理由は『今日は天気が良いから。』

明日 雨降ったら総て台無しなのに、窓という窓を磨いた。
うーん、窓拭きって職業があるならやりたいね。新築みたいじゃん、窓だけ。

でも 家がこうして建ってるってだけでも有り難いと改めて思えたな。

しかし 外で作業してると まー 近所のオバハンが 声かけてくるくる。 『大変ね~、うちは大丈夫だったけど…』 知らんっちゅうねん。『●●さんのウチはああなった』『△△さんのウチはこうなった』


…で?


そうやって 人の不幸な話をわざわざ撒きに来てくれてるわけ?ウンザリだ。

『気の毒にねぇ~』。

アンタのアタマが気の毒だよ。

見てわからんのか、こっちはアンタの世間話(しかも人の大変さ)なんか 聞きたくないんだよ。忙しいし。

30分くらいで 血の気が多い私は耐えられなくなった。相槌も打たない。まばたきもしない。ただただ 精一杯の冷たい目で訴える。『去れ。』w

しかし オバハンには効かないようだ。大体にして 人の気持ちや状況を読めないヤツなんだ、だからこうして 人に纏わりついて 暇を潰す。


疲れる。他人って疲れる。特に こういう類の他人は。

トリップ。


明日で私のロングバケーションはおしまい。明後日からはまた仕事にちょいちょい行くのだ。

こんなオバハンにイライラしてる場合ではない。

休んでいる間私の目つきは冷たさを増したようだ。

無理して笑ったって給料が変わるわけじゃない。本当に楽しい時にだけ笑えばいい。こんな私はガキなんだろう。

あと、話し掛けられない限り 無駄に口を開かないこと。

フォレストガンプ。『口を閉じたままでトラブルに巻き込まれた人はいない。』
うむ。言えてるな。
今 私の右手に銃があって


呼び込みでも なんでもいい、とにかく 初対面から馴れ馴れしく声を掛けられたら

なんのためらいもなく 右の人差し指を曲げるだろう。


殺人?凶暴?狂ってる?

知ってるよ。


大切な人ほど 傷つけあう。

傷つきたくない、つけたくない。


お母さん、ごめんなさい。

お父さん、ごめんなさい。


神様、お許しください。助けてください。