ライトフライヤー

ライトフライヤー

脚本家志望の22歳。


…若干、表現がウザい、かも。

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戸次重幸一人舞台「ONE」を見てきました。


ネタバレあります。
嫌な方は見ないでください。























感想
物事に対しての考え方とか、性格とか、戸次さんってこんな人、っていう自己紹介みたいなお芝居に思えました。
全部じゃないだろうけど、戸次さんの一面一面で出来てるお芝居。
オムニバス形式で、一つ一つの話に何人か登場人物がいるんですが、核となる人物を戸次さんが演じて、他の役はその戸次さんの役柄と会話をしている、というていで話が展開していきます。
戸次さんは一人で何役も演じてるけど、一つの話の中では一役のみだから、とても話が分かり易かった。
すべての役が「またの名を戸次重幸」で、役を演じる、っていうよりそのシチュエーションになった時の戸次さん、みたいな。
すべての作品に貫き通される戸次さん一個人、っていう意味で、まさにONEでした。


ただ、しょっぱなから戸次さんが疲れてるのが伝わってきたのが残念。
カーテンコールはバテバテだけど出てきました!感が全面に出てて嬉しいけど申し訳なく…。


お話一つ一つがカラー分けされたみたいにしっかり色が変わるから、しっかり切ないし、しっかり笑えるし、しっかり怖い。
戸次さんのフランツの時のみたいなトチ狂った演技を存分に堪能できる一話があって、お腹いっぱいになったかと思えば、全力で自分の趣味を爆発させて楽しそうにしてるシゲちゃんもいて、まさかの客イジリのコーナーもあり(めちゃめちゃ近い!)で盛りだくさんでした。





ここからはがっつりネタバレ





舞台装置は、最初は左右と真ん中に三枚のでかいスクリーン。
真ん中のスクリーンが上がると、白いソファー。
あとは、シーンによってちょっとした装置が増える。




オムニバスだから、一話一話、感想。
「映像俳優の今」の主人公は、かつてそこそこに名を馳せた俳優。今は、落ちぶれて、エキストラに毛が生えた程度の役にしかつけない彼の、ある現場でのお話。
主演のモデル上がりの新人俳優にはバカにされ、マネージャーは出来損ない、スタッフに舐められ、撮り順にはふりまわされ、劇団員の後輩の前ではプライドを保ちたい。
散々溜まったフラストレーションが爆発して、怒りに任せて喚き散らした最後に、男は叫ぶ 。


「おいそこの劇団員!
好きで劇団やってるなら今すぐやめちまえ。じゃないと無駄に歳食うだけだぞ。」


これが心に刺さりました。
私も「好き」で芝居をしてる劇団員。
23という年齢を、最近ずっと考えてたもんで。
でも、このセリフで舞台全体の照明が落ちて、横からのライトでしっかり顔が見えるようになる演出があったから、これが、戸次さんの「意見」なんだろうな。


そのあとは「苦労して売れたって、俺みたいになるんだぞ。」的な感じで続くんですが…。
劇団と映像なら、やっぱり映像で売れたら勝ちだと思うんです、有名になる度合いが違うから。
でも劇団は、好きなものが、好きなように作れる、いい作品にしようとぶつかりあえる場所。
役者をやる、のと、役者で食ってく、のは似てるけど全く違うことで、主人公はそこに葛藤してるんだと思った。
劇団を見限り映像に行って、そこそこに売れたものの、現状落ちぶれた男の後悔というか、「じゃあどうすれば良かったんだよ!!」って気持ちは見ていて「あー、辛いな」ってなりました。


…生着替えのシーンがあるんですが、トランクスが私のお父さんのやつと同じ柄で、しかもヨレヨレだったのが面白かった。
あと全然関係ないけど、インナーの白シャツにどんどん汗が染みて行くのが遠目からでもわかって、汗っかきなんだなぁ、と。





「スマホの優越と憂鬱」「貧乏神。」
戸次さんの「世界観」がすごく面白かった!
普段からこうゆう妄想してるんだろうなぁ、って思いました。
特に、スマホに関しては何かあったのかと思う位にぶーたれてた。
もし戸次さんが携帯だったら、っていう目線で、クソみたいな女親友同士のLINEの会話に口を出してみたり、意味のないツイートについて苦言を呈したり。
あと俺(携帯)の機能を使いこなせてない、とか、俺のカメラの画素数を無駄にするな、とか。
なんか、流石「いつか車がしゃべる」って言ってた戸次さんだぁって。


でも、今度から「はらへりにゃん」とか特に意味もなくツイートすんのとか、なんとなく納豆とかのアップとか撮ってせっかくのカメラ機能の画素数を無駄にするのはやめようと思いました。


貧乏神は、舞台では貧乏神になった戸次さんが踊りながら観客と戯れて、笑かして、って感じなんだけども、小説版ではちゃんと一話のストーリーで、ある男が貧乏神に出会って、不幸になる呪いにかかる。 しかも、月替わりで不幸になる呪い。今月は「落とす」今月は「遅れる」みたいに。
で、最終的には銀行強盗に人質にされるんだけど…ってお話で、最後のどんでん返しがとても面白かったから、どんなお芝居になるんだろうって思ってたら客いじりになっててびっくりした。
なんとなく、残念な目に遭う度に「俺には呪いがかかっている…」ってなってそうな戸次さんをめちゃめちゃ想像出来た。
貧乏神が可愛くて普通に笑ってしまった。
あと、近くまで来てくれてびっくり!!
イケメーン!



「死んでも一緒」
金持ちのメンヘラ小説家が主人公。
プロポーズを断られた主人公が女を殺して、でもその死体とまだ一緒に暮らしてるって設定。ある日主人公は悪魔を呼び出して、死んで横たわる彼女の体に自分の魂を移そうとする。



とにかく暗くてグロくてグロい話だったけど、主役の彼は一番イケメンだった。
下手のスクリーンはカーテンになってて、開けると白いベッドがあって、そこに彼女が寝てる。
真ん中にソファー、舞台上手袖にハケたら台所があるって設定。
グレーのシャツ、長い脚、細マッチョな腕!
メガネ!
イケボな上に優しい言葉使い、しかも「お姫様?」とか言っちゃう。


ちょっとポーッとしちゃった!


後半になって、事態がどんどん進むにつれ、気が狂ったのが露骨になっていく彼が、笑いながら人格破綻していくのが怖かったんだけど、とても魅力的で引き込まれた。
手づかみで遺体の口にナポリタン突っ込んで「汚れちゃったね、あとで拭いたげるから。」って優しく言うのとか、髪を撫でながら顔近づけるから、キスかな?って思ったら「やっぱ臭ってきちゃうね。」とかは、正直寒気がした。


彼女のことが好きすぎてどうにかなった、っていう可愛いもんじゃなくて、元々主人公はそんな人で、プロポーズを断られたから殺した、っていうのも、彼女に対しての固執とか執着とかが凄かったんではないかと。
愛ゆえに、じゃなくて、もっと粘着質でドロドロしたものを感じました。
そら悪魔も呼び出すわな、と。
妙に納得してしまった。


お芝居にリアリティがあった、と言えばいいのかわからないけど、普段からしてそうな言葉遣いでお芝居が進むから、なかなか願いを叶えない悪魔にキレるシーンなんかも、戸次さんってこんな怒り方する人なんだ、って思っちゃう位。
さっきも書いたけど、フランツの時みたいな狂った笑い方とか、好きな人はたまらんと思う。
息も絶え絶えの死にかけの姿で、笑いながら「俺がやったんだ」って自分のやった事を全部自分で説明して、のたうちまわる、そんな悲しいイケメンを堪能できる一話。

ただ、いろんな設定がこっちにわかってくるまでに時間がかかって、始まってからしばらくは探り探り話についていくしかなかったのが残念。

カーテンコールで、この話は実はまるまる書き直したって言ってて、ホントは小説に出てきた少年が拘置所に留置されている時の話を脚本にしてたけど、もっと小説とリンクさせたほうが面白いという話になって、これになったそうな。

「だったらどうせならもっとグロくしてやろと思って…(にやり)」が可愛かった。





きちん、と一人芝居として綺麗だなって思ったのは、探偵はおかまバーにいる。
主人公はオカマBARのママ。
初めて生で観たけど、やっぱりこの人すげえ。
マジ、いい女。
指先に漂う色気半端ないから!


で、そのママはカミングアウトと同時に父親に勘当され、お母さんの死に目にも会えなかったんだけども、常連客の探偵によって、その父と弟と再会させられる所から話が動く。
あ、それに至るまでの前半は、ドタバタコメディな感じ。


厳しかったお父さんのこと、家を飛び出してからも唯一連絡を取っていたお母さんのことを自分で話すママの姿がほんとに切なそうだった。


再会を果たした後も、謝るお父さんに「帰ってくれ」しか言わないママ。
お父さんは、お母さんの7回忌に顔出してくれと言う。
不器用なお父さんと、かつて出来損ないだと言われてしまった意地っ張りの息子が、見ていてとても愛しかった。

お母さんの喪服と真珠を息子に渡してこれを着て参列してくれと言ったお父さんの様子が、ってゆうかそれを見ているママの顔に、胸が痛くなった。
脚本も、演出も、戸次さんの演技も、本当に素晴らしかった。
どうやったって取り戻せないもの、許せない事ってある。
そこに苦悩してる姿に、人の、血の通ったあったかい部分を感じました。
本当に素敵な話だった。
そしてこの人、なんだかんだで絶対自分の女装を気に入ってると思う。


最後は、タクシーの話。
今までの作品に出てきたた登場人物たちが、しげちゃん演じる運転手の運転するタクシーに代わる代わる乗り込んでくるという話。
最初は、やる気がなさそうに「もう今日はやめにしよ」ってなってた主人公が、今までの主人公たちを乗せて、会話するうちに「もう少し頑張るか」ってつぶやく。
ほんとにやる気のない顔をしていた彼が、最後にふっ、と笑った時、なんだかホッとした。
戸次さんなりの、タクシーを待つ人へのオマージュなんかな、とも思いながら。
乗ってきた人たちのことも今まで見てきたので、事情がわかってるだけに、その会話がなんとなく想像出来てる面白かったし、話が進むにつれ、主人公の表情と一緒に、空気が和らいで行ったのがとても気持ち良かった。
後から気づいたけど、小説版に収録されてる戯曲版では、運転手はお客で乗ってきたオカマBARのママがオカマだってことに最初から気づいてるんだけど、舞台の上では、えっ?オカマなんですか?!普通に女性の方かと思いました、セリフがあって。
付け足したの演出のカツシゲさんなんかなぁ、素敵な演出だなぁ、と。
お母さんの喪服を着たママが綺麗だったんだなってすごく嬉しくなった。
ママの話を聞く運転手さんの顔がすごく好き。
長い人生の、しがない一日にポッと暖かさが宿る瞬間を切り取って見せてもらったような、気持ちの良い話でした。





上演時間2時間で、カーテンコールが20分ぐらいだったんだけど、本当に面白かった。
普通なら、舞台って脚本家と何人かの役者と演出家がいて、色んな通過点…たくさんの人の脳みそ…を経て作られるから、作る段階で解釈が違ったり、やりたい事が削られてしまったり、捉え方のニュアンスが微妙に変わってしまったりするけど(それは、お客様には伝わりやすくする努力だから悪いことじゃないんだけど。)一人芝居だけあって、通過点が少ない分、色んな意味ですごくやりたい事、見せたいものが露骨だった。
作者が近い?ダイレクティ?なんて言えばいいかわからないけど、すごく濃かった。


というか、作者本人がカテコで「…濃いでしょ。」って言ってた。
「舞台版はごはんですよ。小説版はご飯。2つ合わせてお楽しみ下さい」と。
いいなぁ、一人芝居って。



以上感想でした。
当日券が取れた時は、本当に嬉しかった。
三重県の伊勢市から、大雪を乗り越えて、大阪までの道のりもだいぶドラマチックだったけど。笑
タクシー捕まらなくて12キロ程、吹雪と雨の雪道を徒歩したのは、今ではいい思い出です。
苦労して行って良かった!
しげちゃんすごくかっこよかったです。