第三話:唆す声、涙の決断 11~15








ネタバレがあります。

ヒロインの名前は、「○○」と表記してあります。












11


ロバートさんに言われたように、夜になってから研究所に足を運んだ
警備員には話が通っているらしく、今度はすんなり中に入ることができた
入口ではロバートさんが、満面の笑みを浮かべて待っていた


ロバート「わざわざ来てもらって悪いね」
     「諒が倒れたせいで忙しくて、ここを離れられないんだよ」


「・・・・・・・・」


ロバートさんは、部下の諒さんを心配する素振りすらない
無言で睨みつければ、肩をすくめてみせただけだった


(やっぱろこの人が、わざと諒さんの負担を大きくさせたんだ)



「殺風景な部屋ですまないけど、座って」


ロバートさんが使っているという部屋に入る
ソファーに座ると、ロバートさんがコーヒーを淹れてくれた


ロバート「それで、どうしたの?僕のモノになる決心はついた?」


「・・・わざと諒さんの負担を大きくしたのは、あなたですか?」


ロバート「そうだよ」




12


「どうしてそんなこと・・・!」


悪びれないロバートさんに、カッとして怒鳴った
するとロバートさんは、ニヤリと笑って言った


ロバート「キミが諒と別れないからだよ」


「なっ・・・」


ロバート「言っただろう?」
     「キミが諒と別れれば、諒の将来は保証する」
     「だけどキミが別れなかったら、その逆もあるんだよ」


「そんな・・・」


どうしてそこまでして、私たちを別れさせようとしているんだろう
私を気に入ったと言うけれど、それだけでこんなことをするだろうか


ロバート「諒よりも、いい生活をさせてあげる」
     「だから僕を選びなよ」


「・・・私は諒さんを愛しているんです」


ロバート「・・・愛?愛なんて、なんの意味もない」


冷ややかな声に、ぞくりと背筋が震えた
笑顔を浮かべているのに・・・感情がまるで感じられない
一見冷たそうに見えても、やさしい諒さんとは正反対だ


ロバート「キミが諒と別れてくれれば、彼には手を出さないよ」



13


ロバート「どうする、○○?」



・「絶対に嫌」


「絶対に嫌です・・・っ」


ロバート「だったら諒をつぶすまでだ」


「っ・・・・」




・「諒さんのためなら」


「・・・それが諒さんのためなら」


ロバート「もちろん、諒のためになる」




・「わかりました」


「・・・わかりました」


ロバート「聞きわけのいい子は好きだよ」






「・・・本当に、別れたら・・・諒さんに手出しはしませんか?」


ロバート「ああ、約束する」


「・・・わかりました」
「私は・・・諒さんと、別れます」


喉がつまりそうになりながら、声をしぼり出した


”別れる”


そう口にしただけで、泣いてしまいそうだった
ロバートさんが、私の隣に座った
スッと伸びてきた手を、ぴしゃりと跳ねのける


「諒さんと別れても・・・私はあなたのものにはなりません」
「別れても、私は一生諒さんだけを愛して生きていきます」


薬指にはまる指輪に触れながら、ロバートを見据えた
ロバートさんは、眉間にしわを寄せると、面白くなさそうに舌打ちをした


ロバート「気持ちなんて簡単に変わる」
     「いつまでそう言っていられるか、楽しみだよ」



14


不適に言い放ったロバートさんは、私と距離をつめてくる
身動きできずにいると、ものすごい力で肩をつかまれた


「・・・っ」


ロバート「まあいい」
     「だったら、口だけじゃなく行動で現してもらおうかな」


「行動・・・?」


つかまれた肩の痛みに顔がゆがむ
私の苦しむのを楽しんでいるように、ロバートさんはニヤニヤと笑って続けた


ロバート「僕と一緒に、諒のところへ行こう」
     「そこで、彼に別れを告げるんだ」


「・・・!」


ロバート「楽しみだよ」
     「キミに別れを告げられた諒は、どんな顔をするのかな」


(この人・・・やっぱり、私じゃなくて諒さんを・・・)


ロバートさんが、私を手に入れようとするのは、諒さんを苦しめるためだ
そのためだけに、この人は私と諒さんを別れさせようとしている・・・


ロバート「それじゃあ明日、病院で待ち合わせようか」


「・・・・・・・」


本当はこんな人の言う通りになんてなりなくない
だけど私には、ロバートさんの言うことを聞くしかできなかった



15


翌日


ロバートさんに言われた通り、諒さんの入院している病院までやってきた
来るまでに、何度帰ろうと思ったかわからない
でも私が諒さんと別れなければ、ロバートさんは諒さんにひどいことをする
そうでなければ、今度は過労で倒れるだけじゃ済まないかもしれない


(諒さんを守るためには・・・仕方ないんだ)


何度も何度も、自分に言い聞かせながら病室の前までくる
すると待ち構えていたように、ロバートさんが私に手をふった


ロバート「こないかと思ったよ」


「・・・約束は守ります」
「だから、ロバートさんも守ってください」


震える声で言えば、ロバートさんは肩をすくめてうなずいた


ロバート「キミさえ約束を守ってくれれば、諒に手は出さないよ」
     「彼の出世も、後押ししよう」


そう言いながら、ロバートさんは病室のドアを開いた



ロバート「諒、調子はどうだい?」


諒「・・・・ロバート・・・○○も」
  「どうして一緒に?」


怪訝な顔をする諒さんから目をそらし、ベッドの傍に立つ
そして薬指にはまっていた指輪を外すと、サイドテーブルの上に置いた


諒「○○・・・?」


「諒さん、私と・・・別れてください」







イケない契約結婚   ©Arithmetic





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