1960年の日米安全保障条約改定時に核兵器搭載艦船の寄港などを日本側が認めた密約について、89年の海部俊樹内閣まで歴代首相、外相らに外務省幹部から引き継ぎの説明があったことが、9日公開された外交文書で判明した。政府は密約の存在を否定していたが、昨年6月に村田良平元外務事務次官が「歴代次官が文書で引き継ぎ外相に説明した」と証言。それを裏付ける記録だが、その後の内閣に引き継がれた記録はなかった。
引き継ぎ文書は、68年1月27日に東郷文彦アメリカ局長(肩書は当時)が作成。ライシャワー駐日米大使から63年に大平正芳外相、64年に佐藤栄作首相が核搭載艦船の寄港を認める米側の解釈について説明を受けた経緯を記し、「現在の立場を続ける他なし」と見解を示した。この文書の欄外に、歴代の首相、外相の名前と日時の下に「御閲読済」「口頭にて説明済」などと記されている。文書には89年8月24日付の栗山尚一次官のメモが付属され、海部首相、中山太郎外相に説明したのが最後となっている。次の宮沢喜一首相は外相時代に説明を受けており、93年の非自民政権誕生以降、引き継がれた記録は発見されなかった。冷戦終結後の91年、ブッシュ米政権が艦船や潜水艦への核兵器配備を廃止し、日本への持ち込みがなくなった影響もあるとみられる。【野口武則】
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