マキシのモンハン奮闘記 第13話(終)

帰り道、公園の前を歩いていると、老人とそのお孫さんらしき声が聞こえてきました。

あ、電器屋のお爺さんだ!

『ケンちゃん、あとでママとお買い物に行ったら《マヒダケ》を買ってもらうんだよぉ。おじいちゃんに言われたと言っちゃダメだよぉ』
『おじいちゃん、お口くさぁーい!』
『わはは、ごめんごめん、帰ったら入れ歯洗うからねぇ』

そういえば《マヒダケ》は食材としてもすこぶる美味しくて、大人に人気の最高の【おつまみ】だと聞いたことがあります。でも心臓が悪い人やアレルギーを持っている人が食べると良くないらしいのです。

私は心臓も悪くないし、アレルギーもありません。よし!買って帰ろう!

と、来た道を少し戻って八百屋さんに行きました。

『おじさん、《マヒダケ》ありますか?』
『ちょいと、失礼しちゃうじゃないのさ!あたしゃオンナだよ! ん?… よく見りゃ、あんた噂のマキシっていうんだろ?』

『あ、はい。ごめんなさい』

その時、自転車に乗った高校生三人が通りました。

『出た!ユニセックスw』
『ホントだw マキシに唸ってるよw』
『ははは!w パンチパーマ短ぇ!w』

『なんなのさ!あんた達の母親の顔知ってるよ!………ったく、なんだい?ありゃ?』

凄く怒っているみたいなので、早く買って退散した方が良さそうです。
『あ、あの、《マヒダケ》を3個ください』
『あ?まだ居たのかい? あーそうだったね、1200ゼニーだよ!』
『ありがとうございます』
『いいかい!《マヒダケ》の食べ方は…』
『あ、大丈夫です。分かります』
と言って私は急いでその場を離れました。

人生初めての《マヒダケ》です。
嬉しくてついつい笑顔になって早歩きになります。

家について、袋から取り出し、口を大きく開けて《マヒダケ》を食べるフリをした自撮りをしてSNSに投稿しました。
私は子供ではないのです。
それを皆にアピールしたい。

第三のビールの蓋を開けてスタンバイ。
水道水でマヒダケを綺麗に洗って満を持してパクリ!

ありゃりゃりゃ?
へんてこな気持ちになったよ。
フラフラになってバタン!とその場に倒れました。
コタローが鳥かごの中で騒ぎ始めました。
『ウゴケマセン!ウゴケマセン!』
『こ、コタロー、助け…て…』

舌が痺れて気が遠くなってきました。
遠く意識の向こうでSNSの通知音がやたら聴こえます。白のグンゼが汚れるかも知れない恐怖を感じながら、開かない眼を無理やり開けて画面を見ると。。。。

**** コメント欄 ****
●● ぶはははは!
●●● 😂
●● 食べ方知ってんのかよw
●● 😂茹でてないっぽい
●●●● ☠️
●●● 😇
●● あーあ、死んだ。
●●●●● 😈
●● 💀😱
●●● 流石、バカマキシw
●● ライブ配信希望!
●●●● わははは!😆
●●●● みんなやめなよ、可哀想じゃん。
●● 最低でも15分は煮ろうなw
●●● キャハハ〜 😁
●● 誰か動画撮ってないの〜 ?( *`ω´)
●● 漏らしてんじゃね?
●●● スベり知らずのグリップハンターw
●● モンスじゃなくて植物にヤラレるマキシww
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コタロー、鳴き疲れたろう ……
僕も疲れたんだ ……
なんだかとっても眠いんだ ……
コタロー ………

♫プルルルル プルルルル
だ、誰?

『…… は…い』
『マキシちゃん! SNS見た!大丈夫なの?』
『デラックスせん……』
『いやあああぁぁーー!マキシちゃん!マキシちゅわわわぁぁーーん!バカチン!バカチン!』
『……』
『ん?あ!ごめん、ドミソピザが来たわ。はーい!』
ガチャ ツーツーツー
『………デラ…』

それで良いんです、デラックス先輩。
みんな、マキシは幸せでした。
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マキシのモンハン奮闘記 シーズン1完
遊んでくれた皆さん、本当にありがとうございました。またどこかでお会いした時は、よろしくお願いします。