ろくに打ち合わせもしていない。
各々考えて待ち合わせ場所に行くしかない。
最初に隣の船で作業していたOさんが動く。
「Sさん!合宿所に工具取りに行ってきます!」見張り役の補助コーチに言う。
「おう!わかった。」
隣の船からそっと様子を伺う。
「さすがに二人一緒に離れるのは怪しまれるだろう。おまえ先に行け。」
一所に作業していたAに言う。
「すみません、トイレです。」
「ヨシ」
Sに告げトイレに向かうA。
暫くして、別の船からゴミを抱えたKが現れ、「ちょっとゴミ捨ててきます」といって消えていく。
もう時間があまりない。どうする・・残りはMと2人だけだ。
するとMの声が
「Sさん、Oさんどこ行ったんですか?」
「合宿所に工具取りに行ったぞ。」
「いつ頃行きました?」
「もう3.4分くらい前だ。もう合宿所に着くころだろ。」
今しかない。2人が話している隙に反対側のトイレのほうにそっと歩き、上手く視界から消えた。
待ち合わせ場所の建物裏に付くともう先に4人そろっており最後の到着だった。
Mも合宿所へ行くと言って出てきたらしい。
この短時間で見事に5人全員無事に揃う事が出来た。
「時間がない。即行動くぞ。」
まさか模範生ともいえるこの5人が逃げるとは補助コーチSも思ってはないだろう。
どちらかと言えばおっとりしていて、機敏なタイプではない。異変に気付くまでに時間がかかるだろう。
神奈川出身2人、埼玉出身1人、東京出身1人、全く土地勘が無いメンバーの中に唯一、地元愛知のMが1人いる事は心強かった。
しかもMはこの辺の道路や鉄道にも明るい。
先ずは国道を横切り山道へ入りダッシュする。
20分くらいは走っただろうか。
車では入ってこれない山道に入ってきた。
「はあ、はあ、・・おい、少し休もうぜ!」
「はあ、はあ、・・そうするか。」
人目に付かない草むらに隠れた。
「おいM、ここからどうするんだ?」Oが聞く。
「この界隈の路線は殆ど無人駅なんだ。二つか三つ位先に殆ど人目に付かない駅があるはずだから、まずはそこまで行き人のいない時間帯に電車に乗ろう。名古屋や金山等のターミナル駅へ行くと危険なので、途中で降り少し歩けば地下鉄に乗りかえが出来る駅がある。まずそこを目指そう。」
「お前の土地勘が頼りだからな。頼むぞ。」
「シー!静かに、動くなよ。」なんか聞こえる。
今来た方角からだ。
話声が聞こえる。
耳をこらして聞く。
「こんな奥まできたんかのう、」
この声、間違いない!コーチKの声だ。
早い。もう動き出してるのか・・・
身体を固め、身を潜めながら目を丸くし互いの顔を見つめあう。
声と足音が近づいてくる・・
少しでも物音をたてれば気付かれる距離まで来た・・