ある夏の日、友人IとSの家で3人で遊んでいた。

 

「なあ、今日さ24時間テレビだよな!行ってみたくないか?」Sが言う。
「いいね!行きたい、行きたい」笑顔でIが言う。
「そ、そうだね、いいね、行きたいね。」つい言ってしまった・・内心ダメだろうなと思いながらも。

行きたいのは嘘ではない。行けるもんなら行きたい。

絶対に許さないだろう・・あの親父が・・・
「今から出れば丁度いい時間に武道館につけるんじゃない?」Iが言う。
「わかった。俺、支度して親に行ってくるから待ってて」Sが部屋を出ていった。

3人でSの家を出てIの家に向かった。
「ちょっと待ってて。すぐ来るから。」家の中に入っていくI。

3分も経たない位で出てきた。早いな・・
「気を付けていくのよ。みんなよろしくね。」Iの母が玄関の外まで見送りに来る。
「はい。行ってきます」

さあ、どうする・・・

「俺、親父が許してくれないから2人で行って」などと言う事もできず。

「次はお前ん家だな」

「あ、ああ」言えない。よし、何とか説得しよう。

 

家に着いた。

「あのさ、実は俺んちの親父めちゃくちゃ頭固くてさ。ちょっと説得してくるから待っててほしんだ。」

「OK!待ってるぜ」
「ちょっと10分くらいかかってしまうかもしれないけど。」
「時間は、たっぷりあるから大丈夫だって!」

「あ、あのお父さん。今日さ24時間テレビっていうのがあってさ。それに行きたいんだよね。」
「あっ?なんだ?それは?」NHKしか見ない親父に説明する。

「無駄だ!そんなところに行く必要は無い!」案の定だ。
「そういわれると思ったんだけどさ、2度ある事じゃないし、友達がまってるから今回だけはお願いです。」
「駄目だ、駄目だ、駄目だ!断ってこい!」
「お願いです。勉強頑張るからさ。」
「駄目だ、お前が言えないのなら俺が言ってやる。」
「やめて!本当に今回だけは行かせてよ。お願いします。」土下座して頼む。
「そんなことしても無駄だ。いいか、お前人生は短いんだ。大事な時間を無駄にするな・・・・」
長々と説教が始まる。
もう10分どころじゃない・・
「今回だけは、どうしてもお願いします。行かせてくれるなら条件つけてくれても良いので何とかお願いします。」
「よし!わかった。そこまで言うなら行かせてやろう。但し!お前は10時までには絶対に帰ってこい!それが条件だ。」
「じゅ、10時?」24時間テレビに行くのに・・・・
「嫌なら行くな。」
「わ、わかった。10時には帰ります。」もうこれ以上友達を待たせるのは耐えられなかった。

「ごめん、またせたな。」
「ホントに時間かかったな(笑)で説得できたのか?」S.。
「あ、ああ。何とか。」
「ヨッシャー!行こうぜ!」はしゃぐI。とても言えなかった。

武道館に着いたのはもう8時近かった。バス、電車、地下鉄と乗り換え約1時間。
9時はここを出ないと、10時には帰れない。
2人にはまだ言えない。

結局、何を見たのかも頭に入らないまま1時間は直ぐに過ぎた。

左にいる二人。楽しそうな笑顔。
「あのさ、ごめん。二人でゆっくり楽しんでよ。俺、行かなくちゃいけなくてさ。」
「え、なんで?これからだよ?」
「うん。実はさお前らに言えなったんだけどさ、親父に10時までには帰ってこいって言われてさ。そうでなければダメだって。なんかシラケちゃうから言えなくってさ。(笑)だから二人で楽しんでよ。俺のぶんまでさ。」

「いや、無理だよ。3人で来たんだからさ。だったら俺らも帰るよ。なあS」
「ああ、ここまで来たってだけで思い出になったしな。」
「ちょっと待って!頼むからやめて!ほんとに!俺だけ帰るから!なあ」
なんていい奴ら。でもその時はそんな事思わなかった。ホントにやめて欲しかった!残ってほしかった!

帰りの電車の中、一言も口を利かなかった。
ムカついた!親父に!そして帰ってきたこの二人にも。
なんで帰ってきたんだ!本当に残ってほしかったのだ。優しい二人には本当に失礼だったが、ムカつくだけだった。
「気にするなって。」そんな言葉を掛けてくれる友人に目も合わせず、無視して下を見るだけだった。
嫌だった、みんな、親父も、こいつらも、みんな嫌だった。

境目をつけるなら、この日だろう・・親父との対立を決意をしたのは。