「あっ、あの、すみません・・・」
それ以上の言葉が出なかった。

「お前、もしかして戸塚か⁉」

また、何とかして同情を買うしかない・・
「はい、そうなんです。あの・・実は・・」

「お前、あそこで酷い目にあっとるやろ?」

「はあ?あっはい・・。」

「まあ、家に入れ。どんな事が行われてるかちゃんと教えてくれるか。」

「あっはい。」

どういう事だ?あまり怒っている様子はない。

家の中にあげてもらい、入学の日から自分がされた事、中で行われている事、洗いざらい全部話した。

「やっぱりか・・。ひでぇ話だな・・。海での訓練や朝の体操を見た人の話から相当酷い事が行われてるとは思っていたが、そこまで酷いとはな。」

どうも突き出される気配はなさそうだ。それどころか、寧ろ味方になってくれそうな雰囲気だ。

「前にも死人が出ておるし、変な噂も流れておるしな。わしら近所の者もな、正直快く思っておらんのだわ。お前駐在のIさんの所に行って今の話全部話してくれるか。味方になってくれるはずだから。」

「駐在さんって、おまわりさんですか?警察の方が味方してくれるのですか?」
信じ難い話に思えた。

「いや~実はな、前から怪しいと思ってるんだわ。顔中ボコボコの子を見たり、夜中に呻き声が聞こえたり。只、被害届も何もないので動きようがなくてな。」

夜中に声?まさか!
「駐在さんって、まさか隣の?」

「ああ、そうや。」

ヨットスクールの真隣がまさに駐在所だった・・
「いや、すみません。それだけは勘弁してください。今頃、スクールは大騒ぎになってます。そんな所に行くのは、危険すぎます。」
この人は良さそうな人だが、警察は信用出来ない。

「大丈夫やって。絶対引き渡したりしないから心配するなや。」

「でも・・」

「ちょっと待て。一回電話してみるから。」

家主さんは電話を掛ける。
「あっ、もしもし、Iさんかね。実はな・・・・今変わるから・・・」「ほれ」

「お電話変わりました。」
電話口の向こうのお巡りさんはとても優しい口調で訪ねてくる。

「そうか・・可哀そうにな・・えらい目にあったな・・。もう大丈夫やからな。電話、変わってくれるか。」

「もしもし、わかった。俺が責任もってそっちへ送り届けるから。じゃあ。」
と言って家主さんは電話を切った。

「よっしゃ、行くで。」

「はい。お願いします。」
正直、不安で不安で仕方ないが、信用するしかないだろう。

車で行けば5分も掛からない。
建物が見えてきた。

案の定だ。コーチが2.3人表に立っている。

心地が悪すぎる。
窓から見えないように隠れる。
どうやったって降りる時に見つかるだろう。

「心配するなって。」
運転席のおじさんは言うが。

駐車場に着く。
やっぱり丸見えだ。
恐る恐る背中を丸めながらドアを開け降りる。

「おい!コラッ!」
見つかった!

「おい!あんた、そいつはうちの子や返してくれや。」

「おう!こいつはな俺んちに不法侵入していたんや。とり調べが終わってからや。」

 

「そりゃすんませんな!よう叱っときますからこっちに渡してくださいな。」

「あかんって。警察の取り調べが終わってからや。さあ、来い。」

コーチを無視してさっさと駐在所へ入る。

「よう来たな。こっちに座りなさい」優しい声で駐在のIさんが言う。

椅子に座り、窓の方を見ると、コーチ二人が鬼のような形相で腕を組み仁王立ちしているのが見える。

この後一体どうなるんだ・・・・
留置所にでも入れてくれるのか・・・・

このまま返されたらどうしよう・・・・
不安を抱えながら駐在さんとの話が始まった。