最初の脱走から約一週間。
通常、脱走に失敗したものは、激しい拷問を行けるので直ぐにまた逃げ出そうとするものはいないらしい。
そこも盲点だと考え直ぐに決行を決めた。

その日のトイレの見張りはSという補助コーチだった。
性格ものんびりしていて動作も機敏な方ではない。
非行で入ってきたタイプではない。

先ず最初に、自分が大の方に入り扉を閉める。
次に一人目Aが隣の大へ入る。
直ぐに仲間の一人、Bが小へ行き用を足す。
用を足したBは入り口でSに話しかける。
B「Sさん、明日の天気どう出すかね?」

S「少し振るかもしれないな。まあ海に出られない事は無いだろう。」
B「そうですか。いや~少し温かくなってきましたね。・・・・」
出来るだけ会話を盛り上げ気を引いてもらうのがBの役割だ。
扉の無いトイレの入り口振り向かれたら丸見えだ。Bの役割は大きい。
その間に、なるべく音をたてないように、よじ登りAのいる隣へ移る。
上手く見つからずに隣に移れた。
「ううん」合図の咳払いが聞こえ先輩Oが入ってきた。
そのまま小便をするふりを便器に向かう。
そしてAは水を流し、一人だけ素早く出ていき、手を洗う。気休め程度だが多少はSの視界をそらす位置にはなる。
ここからは音は立てられないが、大急ぎの仕事だ。
Aの居たトイレから素早く出るとなるべく、小便器側のSの死角側の壁で背の高いO先輩に肩車してもらう。
ここまでほんの数分だ。まだBとSの話声は聞こえる。
Oに肩車されながら、窓に近づく。すっと体を入れ込み一瞬で格子をすり抜け外に落ちた。
「ドスン!」ヤバい音が聞こえたか・・・・
耳を澄ます。何事も無いようだ。


幸い下は土だった。

少し肩を打ったが、支障はなさそうだ。


さあ、扉の中に誰もいない事に気付かれるのも時間の問題だろう。
とにかく全力疾走でここを離れよう。