いつかは経験すること





実は私は昔から母のことが大嫌いだった。


上から押さえつけてくる感じ。

ちっとも親の愛情なんて感じてなかった。

たまに大喧嘩。

それが原因で過呼吸で救急車で運ばれたことも。

一度でいいから早く死んでくれ!

とすら何度も思ってきた。


散々迷惑かけてばかりだったのに。


幼少期は他人に分厚い壁を作って誰とも口を聞かなかった変わり者すぎる私。

こんな子供を持った母は、さぞ悩んだことだろう。

誰も友達もいない。

それがやっと結婚して、子供の母になり

まともな人生歩み出したかと思ったら

離婚して不倫して堕胎までして

もうみんなで死ぬしかないくらい思い詰めさせてしまった。

そんな私の、母はずっと味方でいてくれた。



彼のおかげで、やっと親の有り難みも

恵まれた環境も、感謝できるようになってきたけど

それでもまだ母に冷たい態度をとり続けていた。


あの日までは。


母に癌ができたとわかって

あんなに死んで欲しかったはずなのに

いざ目の前に現実として迫ると

いかに母のことが好きだったのか今になってやっと気づいた大バカ者。


人生最後の食事は梅干しのおにぎりがいいってずっと思ってるのは

幼少期、運動会で握ってきてくれた母のおにぎりが大好きだったから。




幸い、今回は軽い手術ですみそうだけど


人は必ず死を迎える。

死なない人なんていない。

年齢差からして、私より先に親が旅立ってしまうのは受け入れないとダメなんだけど

まだまだまだまだ元気でいてほしい。


目の前に現実突きつけられないと

その偉大さに気がつけない。

失いたくないけどいつかは受け入れなければ。


まだまだと言っていてもタイムリミットは刻々と刻まれている。


その時、どうやって受け入れたらいいのだろう。


悲しみから這い上がれるのかな。


残された悲しみをまだ私は経験していない。



そして彼にその悲しみを味合わせてしまわなければならない悲しみもこれから経験しなくてはならないだろう。