…翡翠の森の物語… | Ricoの世界

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            …あらすじ…
翡翠の森に住む妖精のドワーフたちは、楽しくも賑やかに仲良く暮らしていました…ドワーフたちの仕事は森の奥深くにある泉に眠る翡翠を守ること。ある穏やかな日…いきなりけたたましい風の音で森に侵入者が入ったことがわかる。緊張した面持ちで持ち場に走るドワーフたち。さぁ…武器のない戦いが始まる。





                    イラストはYahoo!画像よりおかりしました。



            …翡翠の森の物語…






風の精霊シルフである私は、絶えず森の中を走り回っているのです。

森には西と北の2ヶ所の入口があり…今回は西から侵入者を確認…

侵入者を見つけた私は…突風でドワーフたちに知らせます。

私の合図を感知した社長が、みんなに号令をかけます。

「だれか森に入ったな」その一声で…翡翠谷の村に緊張が走る。

所定の位置に置いてあるヘルメットを取り、頭に被りながら…急いで持ち場へと走る。






泉を守るために村人の家の中には各自ミッションルームがある、。

360度回る椅子とその椅子の周りにはたくさんの鏡が置かれ…各自が鏡を器用に操り、侵入者を追い出すのである。

社長は自分の部屋に戻り、モニターを見つめます。

森の中に何箇所も探知機とカメラが設置されてるので侵入者の姿形は社長には見えるが、他の人には見えない。

モニターの前に座り、各自が身につけているヘルメットのイヤフォンに、長老の声が流れる。

「侵入者は身長180…体重120はあるな。頭にライト付きにヘルメット…そして大きなリュックを背負っている。顔半分髭面…衣類は全てカーキ色で手にはスコップとザルを持っている。明らかに翡翠を探してると思われる。みんなで出口までお連れしよう」

長老の的確な侵入者のイメージを捉え…メンバーは持ち場でミッションを進行する。

順番に行くと…出入り口に一番近い持ち場を守るのはぎょらいちゃん…まず、鏡を使って違う道を作り誘導する。

「ハイハイハイ…この道はどうかしら?」楽しそうなぎょらいちゃんの声に…

「いいわね…そっちを選んだのね…じゃぁ私はこっちを選ぶわ」

ヒロさんが大きな熊の姿を映し出すと、侵入者は身構え静かに後ずさり始めた。

そして…熊が動かないうちに、その場から走って逃げ出した。

モニターからその姿を確認した社長は…

「でかしたヒロさん。ヒゲ男は逃げ出したぞ」社長の言葉に…

「やっぱり見かけより…怖がりね」ほくそ笑むヒロさん。

そこへ、うさぎさんが大きな道を侵入者が見えるように映し出す。

「ヒロさん…誰だって、そんなに大きな熊は怖いわよ」うさぎさんは笑っている。

侵入者がは3人が作った道をくるくる回り始めた。

侵入者のヒゲ男は疲れ始め…木の祠に座って、持って来たパンを食べ始めた。

キョロキョロと周りを見回し…見覚えのある景色に頭を傾げる。

「ここはさっき歩いた気がする…」髭男はそう呟いた。










半日も歩き回った頃…ろくさんが偽の泉を映し出す。

侵入者は、泉を見つけ走り出すが…行けども行けども泉にはたどり着けない。

そこへ天使の姿の翠さんと和代さんが道に立ち、侵入者にこっちへおいでと誘う。

半信半疑でも、疲れきった侵入者は、2人の元へじわりじわり歩み寄っていく。

その顔にはありありと疲れが滲みでていた。







侵入者がハッと気付き…周りを見渡すと…そこは森の出口。

鬱蒼とした森の木々が森の出口を覆い隠す…鳥のさえずりが聞こえる。

髭面の侵入者は呆然と立ち尽くし…呟いた。

「この森には魔物がいると聞いた。森の中の泉を見たものは誰もいないらしいが、俺は絶対探し出してやる。この森の中のどこかにある泉を…そして…翡翠をな」

その男の疲れきった顔の目だけが…光っていた。






トボトボ引き返していく男の後ろ姿をみつめ…みんなが小躍りして喜んでいる。

「何回でもくればいいんだわ。絶対見つけられないから」ぎょらいちゃんの鼻息は荒い。

その姿を見つめながら…

「あらあら…今回、ぎょらいちゃんは強気ね」っと、うさぎさん。

「あったりまえじゃない~~。私たちをなんだと思ってるの。天下無敵の翡翠の守りびとよ。見くびらないでよね」興奮冷めやらぬぎょらいちゃんに向かって…

「さぁさ…美味しいお茶を飲んでゆっくりしましょ。半日の戦いだったんだから」

そう言うと、ヒロさんがみんなにローズティーを入れてくれた。

何事もなかったように、みんなは大きなテーブルを囲み…穏やかな時間が始まる。




「さっきのかずよさんの衣装…翠さんが作ったのよね。素敵だった…私も欲しいなぁ…」

ヒロさんは翠さんにお願いをする。

「そうね…ヒロさんが天使の役をやる時があるかも知れなからね。いいわよ…どんなデザインがいい?」

翠さんは快く引き受けている。

そして、嬉しそうなヒロさんと2人で打ち合わせを始めた。




その横で、ろくさんとうさぎさんは侵入者の話をしている。

「あんな大きな男って…初めてね」うさぎさんが言うと…

「そだね。俺なんか踏まれたらひとたまりもないぞ」憎々しげに答えるろくさん。

「それは、ろくさんだけじゃないわよ。私たち全員よ」

そう言うと、うさぎさんはお腹を抱えて笑いだした。

ろくさんは、一瞬考えて…

「そっか…そうだな。うん…そうだ」うさぎさんの言葉に納得したろくさん。

ろくさんは何か言われると…一瞬頭の中が真っ白になるらしいが、すぐに思考能力が蘇り理解ができるらしい。

「あんな男に見つけられたら…そう考えるだけで頭にくる」

今頃…ぎょらいちゃんの悔しさがわかったらしい。

「そうでしょ。そうよね」っと、ぎょらいちゃんがろくさんに同意を求めた。

「うん。翡翠は誰にも渡さない。そうしないとこの世界が危ないんだ。人々が危ない」

ろくさんもぎょらいちゃん同様…大きく頷く。

神の怒りに触れ…人々が絶滅させられるのが目に見えている。

「そうだな…古代から守ってきた翡翠を、これからも俺たちが守り続けていかなければ…武器を持たない俺たちが、人と戦わずして翡翠を守る…それが神との約束だからな」

社長の悲痛な声に…みんなが一斉に頷く。

侵入者が去り、静かで穏やかな森に戻った。

みんなはそれぞれに好きな事を始めている。

泉のそばで釣りをしていたジジリさんも駆けつけ…この騒ぎを見守っていたが…安心した様子。

揺り椅子に座っているかずよさんのそばに行くと…横に座って楽しそうにおしゃべりが始まった。

その横をぎょらいちゃんがスケートボードに乗って遊んでいる。

社長とろくさんは鏡の点検の打ち合わせをしている。

月に何度か全員で鏡を磨く…それも大事な仕事だ。




翡翠の森にも静かに陽が…翳って来た。

それぞれの家から…美味しそうな夕飯の香り…

もうじき…月が上り始める…穏やかなドワーフたちの暮らし…







みなさん…翡翠の森のおはなしはここまで。

又…みなさんと森のお話ができる日が来るといいですね。

では…私は森の中を風となって吹いてきましょう…不審者が回って来ないようにね~。