私は大学受験は無理だと思った。
食べ吐きすると、脳が萎縮するようなダメージがあり、短期の勉強はできるが、俯瞰するような脳の使い方ができなくなった。

目の前のことは、何とかできる。
定期テストはいつも良かった。
学力テストもいつも5位以内だった。
学力テストで5位以内で、部活を真剣にやって、全国大会まで行ったのは私だけ。
ボランティア活動もしている。

推薦に応募しよう。急に思い立ち、担任に推薦してほしいとお願いする。
締切3日前に。驚いていたけれど、一生懸命書いて、推薦するから、と言ってくれた。

1番人気の指定校推薦枠。
14人応募だったが、推薦勝ち取った。
人生を崩しはじめていたが、
重ねた努力が人生で初めて報われた気がした。

高3の1学期に大学が決まり、あとは大人しく過ごすだけ。他の人を刺激してはいけないし、誰とも仲良くしないようにした。ただ、同じく推薦で決まったというクラスの子が近づいてきてくれ、彼女とは今も続く友人となった。

そんな時にあらわれた男の子だった。

休みの日も会った。私服がオシャレだった。今でいうイヤーカフみたいなのもしてきて、かっこよかったな。
私は可愛い服を持ち合わせてなくて、太いと悩んでいた足をみせたくなくて、パンツがロングスカートはいていたな。
服、釣り合ってなかったよね。

彼に関して気になったのは同じ高3だから、
今って受験勉強正念場を迎える時期だけど、してなさそうだったこと。

学校どこか聞いてなかったから、聞いてみたら、知らない学校だった。
家に帰って、電話帳みたいな偏差値学校一覧みたら、自分の学校と偏差値が15も下だった。

もしかして、大学受験しないのかな。
お父さん亡くなった、って言ってたし。

次会ったとき、むこうから
『みな大学受験する学校じゃん?もしかして今勉強忙しいのに会ってくれてる?』
といわれ、もう決まってるんだ、と伝えた。
私も思い切って、そっちは?と聞いてみた。

『実は、オレさ、オヤジいなくてさ。
今悩んでる。姉ちゃん短大行ってて。
母さんひとりで大変だから。専門学校も考えてる。あ、なんか暗い話ごめん』
って言われて、なんて言ってあげたらよいかわからなかった。

大変だね。といってみたけど、何だか冷たい響きもあるよね。

『オレ、不真面目に生きてきたなという面ある。きみが嫌いなタイプの男だったかもね。でも、オヤジのことがあってから、ガラりと気持ちが変わったっていうか。ちゃんとしなきゃって。今までいた周りの女の子はこういう話してもあれで。だから、真面目に生きてる子に話をしたいっていうか。あ、やっぱこの話いいや。暗いのはやめやめー』
と切り上げてしまった。

私は戸惑った。この人を支えてあげられるほど、今の私は強くない。強くないどころか、ボロボロなんだ。
強かったら、話を受け止めてあげられるのに。支えてあげられないから、深入りもできない。

地元の繁華街を歩くと毎回、彼の知り合いの女の子に会う。知り合いの多さ、その女の子達の風貌をみると、遊びまくってたのかな、と思う。ミニスカートにルーズソックスで、垢抜けた子ばかりで、ダサい服きた私が隣にいるのをみて、私には声をかけず、え?新しい子?と私にちょっとだけ聞こえるように彼に声かけてくる。
『そんなんじゃない。大事な友達だよ』
と答えてる。
その答えに、私は安心を感じていた。

彼を好きだと思うけれど、付き合うのは幸せにはならないとどこかで感じていた。 

たまに、真剣な視線で見つめられて、
心臓がドキドキして、どうしようもなく好きだと思って眠れない夜もあった。

私の自信のなさ

彼の抱えてるものがどれだけのことかわからないことへの不安

彼の周りの女の子達がこの先も私が一生友達にならないだろうタイプであること

彼は今悩んでいるから血迷って私に近づいてきているけれど、目が覚めたら、いきなり醜い豚を見捨てるようなことになる日が来る不安(私はすっかり大好きになっていて、一生立ち直れない)

でずっと気持ちにブレーキをかけながら会っていた。

次いつ会える?
そう聞く彼の顔を見た後は、
やっぱり好きすぎて、
彼のペースに委ねたくなる誘惑に。

ある日の待ち合わせの日。
何故かずっと機嫌が悪そうだった。
両親とも機嫌の悪さを子供に押し付け、罪悪感を感じさせてコントロールする人だから、機嫌が悪いのを隠さない人に嫌悪感がある。

もう、帰るね。
立ち去ることにした。

ごめん、と言われたけれど、
あのクシャッと笑って、私を眩しそうにみてくれていた彼が、私に起因する何の理由もなく、
私に不機嫌を向けてくるのが怖くて、
黙って帰った。

あ、もう終わりでいい、って急に思えた。
不安をこれ以上抱え込めない。
機嫌が悪いのをあれこれ気にする時間は、両親からのものでお腹いっぱいだ。

もう一度会って、もう会わないと告げた。
私は器が小さいから、受け止められない。
あなたが思ってるような良い子じゃないんだよ、って。
大学も遠いから、生活が合わなくなるし、うまくいかないのを感じながら続けるのは苦しい、と。
沢山楽しい時間をくれてありがとう、と。

ただしばらく後悔はした。
あんなに楽しくドキドキしたのは
人生で初めてだったから。
どうしようもなく好きと思って、涙が出たことがあるのも彼だけだ。
Blue Jeans を聞いてあの頃の感情が鮮やかに蘇ってきた。

今頃どうしてるかな。

今でもその時の感情をクリアに覚えてる恋だったから、
忘れる前に書いて残したかった。