昨年も、子どもの通う小学校の運動会でも組体操が行われました。

一昨年PTAの集まりにて当時の校長から「組体操の安全基準が見直された」との発言があり、また各保護者へプリントも配布されており、ピラミッドとタワーの演技は禁止されることになったと知らされていました。ですので、そんなに危ないことはないだろうと考えていたのが正直なところです。

ですが、運動会当日に組体操を実際に目にしたときには驚きました。

到底安全とは思えないような体制で体操が行われていたからです。

 

大いに問題だと思ったのが、「人間起こし(トラストフォール)」という技でした。

 

一人の児童をもう一人の児童の肩の上に乗せ、それをさらに数名で支え、下に立つ児童たちの頭上から上に立つ児童を倒したり起き上がらせたりした上で、それを複数名で後方で受け止める体操技です。文字ではイメージしづらいと思うので、一度動画を検索してみていただければと思います。

 

何が問題だったのかというと、マットも、あるはずの補助教員の姿も、手助けが可能な位置にはなかったことです。

 

演技中、上に立つ一人の児童が前方に倒れこみそうになりました。

支えになる児童の肩の上にいる状況で、足首は固定されていますので、落ちるとすれば顔や頭から落ちてもおかしくありません。仮にひざや足から落ちても、下にいる支え役の児童に大きな怪我があってもおかしくない状況でした。

ですが、前方に補助教員の姿はありません。

あるのは離れた位置に来賓席と観覧席。

 

私には、子どもの安全性よりも「見せ物」としての組体操を優先しているように見えました。

 

 

どう見ても補助は足りているとは思えない状況を目にし、そのままにはできなくて、区の教育委員会に電話をしました。

上記の状況を伝え、学校に指導をしてほしいとの旨を伝えたところ、実は当日教育委員会の担当者も運動会を見に行っていて、その場で校長へ指導をしたとのこと。

こちらからは、離れた後方位置に教員が数名いても、補助にはならずに事故は防げないのではないかということ、上に立つ児童が倒れる後方の場所には十分なクッションのマットが必要と考えること、3メートルの位置に頭部は届いていないとはいうもののほぼ上限と同じ高さであることは危険と考えているということ、前方への補助や安全対策は何もなされておらず問題だと思うこと、そもそも危険な体操技をやめてほしいということを伝えました。

また前校長からの「都の基準を基に、区も基準を定めた」といった発言をもとに、都にも資料請求をすることとしました。

 

以下が公開資料請求を行い取り寄せた資料と、当時の学校長から保護者へ配布された資料です。

 

 

 

区の設けている実施基準の内、最も解せないのは「3メートルを超えない」の部分です。

 

高学年児童の身長は、女子平均約149cm/男子平均約148cm。ほぼ150cmです。

人間起こしでは肩に乗る形で体操技をしますので、全頭高が20㎝程度と考えても、150+150-20=280cm、かつ土台役の児童は比較的体格のいい児童が担当しますので、ぎりぎり3メートル行くか行かないかです。

今回、子どもの通う小学校では、ほぼ上限に近い高さを有して体操技をさせたのにもかかわらず、安全対策は不十分だったわけです。

 

 

ですがそもそも、その基準となる「3メートル」は、適正な基準なのでしょうか。

 

厚労省が定める、高所作業の際に安全帯の着用が義務付けられているのは、2メートル以上の高さです。

 

労働安全衛生規則第9章 第一節  墜落等による危険の防止

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-2h9-0.htm

 

この3メートル、が、果たして児童にとって安全が確保される高さなのか。

 

以前目にしたことのある組体操における事故の分析資料では、高さに関わらず、倒立補助の際に相手児童のかかとが眼球に当たってしまい、深刻な事故になってしまうケースも多いことを知りました。

言うまでもなく、死に至る事故も、障害が残る事故も、決して少なくありません。

http://www.pref.nara.jp/secure/156465/組体操分析資料%EF%BC%88修正版%EF%BC%89.pdf

 

本来、体育祭や運動会も根本とする目的は教育です。

児童の精神面での発達を促すために、鑑賞者からの反応や賞賛を教育の効果として必要とするのであれば分かりますが、目的が鑑賞者を喜ばせることとなり、それにより取り返しのつかない怪我をするようなこととなれば本末転倒です。

一度フラットな頭で、何のために、だれのために、効果がどのようなものか

目的と効果を考え直す時に来ているのではないでしょうか。

 

現状の技の中で選択肢を減らすことにより、見ごたえや達成感が得られなくなるとの考えもありますが、選択肢を、今ある技の中からのみに狭めて考えてはいないでしょうか。

組体操と一言で言っても、バルーン、マスゲーム、チェアダンスやラインダンス、今までにない要素を取り入れるだけで、安全を確保したうえで、新しい、大きな見ごたえは得られるのでは。

授業にもダンスが取り入れられている昨今、現存のやり方に捕らわれることよりも、新しい技を取り入れることで、危険性を下げるとともに児童の発達にも効果的な方法を模索することは可能なはずです。

 

アクティブラーニング(児童本人たちによる実践教育)を行い、ダンスの得意な生徒に振付を考えさせるなど、自分で考える能力の発達を促す機会にすることもできるかもしれません。

今までにない教育、指導の展開も模索してほしい。

 

保護者に向け何よりも言いたいこと。

自分の子どもが、参考資料にあるような状況に置かれたらどうか、考えてみませんか。

骨折する危険性、半身不随になる危険性、亡くなる危険性のあることと達成感や見ごたえ、見る側の楽しさやいわゆる「感動」を秤にかけたとき、どちらを選ぶでしょうか。

自分の子どものこととして考えてみませんか。