「仏像の本場」というと、やはり奈良や京都を中心とした畿内を先ず思い浮かべるが、東京でも、なかなかどうして名仏を拝むことは可能である。

そちこちにある美術館・博物館に、奈良や京都、鎌倉などに伝来した名仏が収蔵(あるいは寄託)されているからだ。
今回取り上げるのは、そんな「東京のミュージアムで見れる仏像」の中でも、屈指の名仏と思う愛染明王坐像である。
個人的には、全国に現存する愛染明王坐像の中で見ても、屈指の名品ではないかと思っている像だ。

※写真は現地で購って来たポストカードより

世田谷区にある五島美術館の、第一展示室入口に常設されている愛染明王坐像である。
鎌倉の鶴岡八幡宮の愛染堂に伝来したという逸品で、像高は117㎝だが、台座や光背(いずれも当時のもの)も含めた総高は224.4㎝と、堂々たる像である。
いかにも鎌倉の仏像らしい、写実的でかっこいい造形だが、頭上の獅子の顔が、見ようによっては、ちょっと情けないような、そんな表情に見えるのもお気に入りのポイントだ。

 

【拝観の記録】
木造愛染明王坐像/重文/東京・五島美術館蔵
鎌倉時代・十三世紀/像高=117.0㎝(総高=224.4㎝)/木造・彩色
拝観日:2023年11月14日
於:五島美術館「古伊賀 破格のやきもの」展(本像は、特別展会期中でなくとも拝観可能。第一展示室入口に常設で展示されている)