本年(2023年)9月~11月、東京国立博物館(以下、東博と略記)で開催された特別展「京都・南山城の仏像」で拝観叶った仏像を、ピックアップして取り上げるシリーズ。
今回は、薬師寺の薬師如来坐像を取り上げる。
薬師寺といっても、一般によく知られる奈良の薬師寺ではない。
「南山城の仏像」展にお出ましの像なので、南山城(京都府相良郡和束町)にある薬師寺のそれである。

※写真は現地で購入して来た図録より


実際には像高60㎝に満たない小さな像なのだが、肉厚な体つきなどに存在感があって、実際以上に大きく見えた。
体つきの割には顔はスマートで、シュッとした印象。

だが、同時に柔和な、こちらに微笑みかけているような表情にも見えた。
この表情のせいか、右手の施無畏印が、「よう!」とこちらに手を上げて軽く挨拶しているように見えてきた。

施無畏印に同様のことを感じることは間々あるのだが、この像ほど「よう!」と人懐っこく話しかけられているような印象を持った像は、ほかに記憶がない。
また、結跏趺坐して膝の上に乗せた両足の裏が、完全に衣に隠れているという表現もレアなんじゃないか? と。
サイズ感といい面相といい、とても親しみが持てる像だったように思う。
 

【拝観の記録】
木造薬師如来坐像/重文/京都・薬師寺蔵
平安時代・9世紀/像高=54.6㎝/木造・漆箔
拝観日:2023年10月5日
於:東博「浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念特別展 京都・南山城の仏像」