前回までの、東京国立博物館(以下、東博と略記)の特別企画「大安寺の仏像」からのシリーズに続いて、今回からの新シリーズも、やはり東博の特別展で拝観した仏像を取り上げる。
本年(2013年)3月7日~5月7日に開催された「特別展 東福寺」に出陳されていた仏像からのピックアップだ。
その第一弾として今回は、東福寺伝来の地蔵菩薩坐像を取り上げる。

※写真は、展覧会で購って来た図録より。

まず目が行ったのが、右手の表現。
人差し指と小指を立てて、天を指すようにしている。
かなり珍しい印だと思う。
しかし図録の解説によると、平安時代の地蔵菩薩にはこうした印相の地蔵が幾つか見られるらしく、本像の造像に際して、そうした古像を参照した可能性もあるのでは? とのこと。
また、着衣の表現は慶派仏師がよくした手法らしいが、この像が造られたと見られる13世紀半ばには、円派や院派の仏師もこれを取り入れていて、東福寺が院派仏師との関係が深いことや、慶派とはやや作風が違うことなどから、院派仏師による作ではないかとの見解も図録には書かれていた。

いずれにしろ、整った瞑想的なお顔立ちや、全体にバランスのよい造形も魅力的な、素敵なお地蔵様だと思う。

 

【拝観の記録】
木造地蔵菩薩坐像/重文/京都・東福寺蔵
鎌倉時代・13世紀/像高:85.2㎝/木造・彩色・漆箔
拝観日:2023年3月10日
於:東博・「特別展 東福寺」