現在も東京国立博物館(以下、東博と略記)で開催中の特別展『法然と極楽浄土』(6月9日迄)で、拝観して来た仏像について、ピックアップして記す第3弾。
今回は京都の上徳寺に伝来する、個性的な阿弥陀如来立像について。

※写真は、現地で購入した図録より

一般的な阿弥陀如来立像と、本像の差異を挙げておく。
まず、通例とは逆に左手を上げ、右手を下におろしている。
いわゆる「逆手(さかて)」と云われる手の形である。
そして、最も注目すべき点が唇。
両目の内側から水晶を嵌めて玉眼とするのは、この時代の像のスタンダードだが、本像は眼だけではなく、裏面が朱彩された水晶を、唇の外側から貼り付けているのだ!
経典では、鮮やかな赤色とされる仏の唇を表現するための工夫と見られるが、同じような唇を持つ像の作例は、ほかに二例しか確認されていないと云うレアな構造。
そう云われて唇に注目して見ると、妙に艶めかしい印象を受けた。
上記した特徴を除いても、全体に端正なルックスの、かなりのイケ仏と思う。

 

【拝観の記録】
木造阿弥陀如来立像/重要文化財/京都・上徳寺蔵
鎌倉時代・13世紀/像高97.3㎝/木造・漆箔・唇に水晶
拝観日:2024年4月30日
於:東博「特別展 法然と極楽浄土」(東博平成館)