新聞の書籍紹介欄で「家康が最も恐れた男たち」に目がつきました。ちょうどNHK大河ドラマ「どうする家康」も放映されているので、これを読んでみようと思いました。

 

家康が晩年、今までに出会った才能ある強者たちを振り返り、側近に語る設定で描かれた歴史小説です。登場するその強者は全部で8人。武田信玄、織田信長、真田昌幸、豊臣秀吉、前田利家、石田三成、黒田如水、真田信繁。

 

この小説も大河ドラマ同様、家康を非才の立場で描いています。しかし、このなかで家康がすごいのは、人間をよく観察し、その人の人間性を自分なりに読み解き、それを自分の糧にしていくところです。

家康は幼い頃から人質生活を経験した故か、人の心を読むことで知恵を身につけ、逆らわぬように振る舞うなかで忍耐を学び、そして長生きしたことも幸いしたので、天下を取ったのだと思います。またその後、264年に及ぶ太平の世(大坂の陣はありましたが)をつくれたのは、家康が得た知恵によるものが大きかったと思います。自分に才能がないこと(人から学ぶ謙虚さも、才能の一部だと思うのですが)から、適材適所に人を配置しました。また、得た知恵によって、戦を起こさない仕組みを作り上げたのだと思うのです。

 

この小説では、普通の歴史小説のように、時間の流れ通りに歴史の全体を描いていくのではなく、登場する猛者を一人づつ取り上げ、描いていることが特徴です。ですから、8章立てになっています。

しかも、家康の視点で描いているため、読者自身が歴史を俯瞰してみるのではなく、家康のそばにいて見ているような感覚で、話が進んでいきます。家康が得た情報しか描かれていないので、緊迫感や臨場感があります。歴史ですから結末はわかっているものの、サスペンス小説を読んでいるようなワクワク感があります。

何よりいいのは、家康がそれぞれの猛者から何を学んだかが記されていることです。これはとても参考になりました。

 

このような形で書かれた小説なので、楽しく読むことができました。歴史に少しでも興味がある方にお勧めします。  

 

 

 

《今日の心が動いた》

君を善(よ)くするものは全て君の中に

    ローマの哲学者/ルキウス・アンナエウス・セネカ