世界で最も権威のある文学賞の一つに「全米批評家協会賞」というのがあるらしく、その小説部門の最終候補に、川上未映子さんの「すべて真夜中の恋人たち」の英訳版が選ばれたそうです。

この情報を知って、図書館からこの本を借りてきました。もちろん、英訳版ではなく原作をです。

 

 

まず、タイトルが私には意味不明。文章になっているようないないような、不思議な言葉。本作の最後にこのタイトルの意味が書かれていますが、それでもぼんやりとしたイメージです。

本文を読んでみると、人付き合いが苦手で内気な女性が、社会の感覚とのずれを少し感じながらも生きていきます。その彼女が恋に落ちてしまうというストーリーです。

彼女と付き合う教師の男性は、よほど忍耐強いと思いました。私の性格では、このような女性と付き合ったら、イライラしてばかりいると思います。彼の忍耐強さというか、うまく合わせるというか、このような技量が私にもあったならと、思ってしまいました。

また作者が女性のためか、会話部分が長いです。女性作家の特徴かもしれませんね。でもそこには、異性間では話さない、女性間ならではの会話が赤裸々に描かれています。女性同士だとこういう会話をしているのかと、未知の世界に足を踏み入れた感じでした。

 

この作者である川上未映子さんは、2008年に「乳と卵」で芥川賞を受賞しています。

「全米批評家協会賞」の発表は、今月23日(現地時間)に行われるそうです。もし受賞されたら、「この小説、読んだよ」と友人に自慢しましょうか。落ち着いて考えてみたら、たいした自慢にはならないことに気づきました。

 

 

 

《今日の心が動いた》

利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。

     アフガニスタン国民に敬愛された医師/中村哲