得意先の窓口を担当してくれている30代の女性から、先月末、声をかけられました。
私は、2年前に糖尿病の専門医を受診し、栄養士の指導を受けてから、12キロのダイエットに成功しているのを、彼女は見ていたのです。そこで、「どうやってダイエットできたのか、教えてほしい」というのです。
彼女の外見は、全く気にすることはないように見えますが、そこは乙女心。男性の私には、なかなかわからないことなのかもしれません。
ダイエット法の話は、数分で話せる内容ではありませんし、仕事中の長話は先方にも迷惑がかかります。「レポートにまとめます」と言って、その場を後にしました。
いざ書き始めてみると、ダイエット方法だけでは、なぜ私がダイエットできたのかを、うまく伝えられそうにありません。そこで、これまでの過程も付け加えることにしました。そして出来上がった文章は、A4の用紙で11枚。それにデータ資料が4点となってしまいました。こうなると、レポートではなく、論文です。私に文才があれば、この半分の量でも、ちゃんと伝えられるのでしょうが…
これまでも、私のダイエットに関心をもたれた方はいました。その方々にも、さまざまな形でお伝えしてきましたが、おおざっぱだったり、部分的なことが多かったように思います。今回は、今まで私が学んで実践したことを、書き尽くそうと思いました。ただ、全て書いたのでは、何が重要なのか、わからなくなってしまうので、どうしても伝えたい基本的なことは、網羅しようと考えました。その思いで書いたら、論文となってしまったのです。
あまり長くなったので少し不安になり、彼女に渡す前に、この文章の添削をお願いしようと、知り合いを訪ねました。すると、その文章を半分読んだところで、ギブアップ。「余談が多く、こんな長い文章を、読んでくれるかな」と、懐疑的な言葉が、彼の口から吐き出されました。これで私は、すっかり落ち込んでしまいました。
約束の期日まであと数日、どうまとめたらよいか頭が混乱する私には、解決策が見当たりません。「ダメもとでいいや」と最後は開き直り、昨日、訂正せずにそのまま彼女に届けました。
待ちかねていたのか、彼女はとても喜んで受け取ってくれました。しかし私は、「数枚読んだら、ガッカリされるだろうな」と、この後のことを想像しながら、浮かない顔でその場を去りました。
今日、彼女からメールをいただきました。そこには、こう書いてありました。
「昨日は、ありがとうございました。一気に読み進めてしまいました!また、お話がたいへん面白く、事務所内で肩を震わせながら読みました。誰にも見られていないことを祈りながら。本当に感謝でいっぱいです。ありがとうございます!」
私はこのメールを目にして、彼女に喜んでもらえたことがわかり、ホッとしました。そのあとじわじわと、私の心にも喜びの気持ちが湧いてきました。
本当によかった。
≪今日の心が動いた≫
チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ。
[ホンダ創業者/本田宗一郎]