禍々しい花の夢を見てしまったのだった。
打ち捨てられて廃墟になった町があって、夜になると建物に黒い蔓草が絡みつき急速に成長して毒々しい黄色い花を咲かせる。
花の中心に人の顔に見える部分があり、完全に成長しきると目が生じてどう見ても人の顔になるのである。
そして、朝日が差し込むと花は跡形もなく消えてしまうのだが、その時に断末魔の叫び声のような、この世の物とも思えない叫びを残して消滅するのだ。
単なるうわさなのか事実なのか、その叫び声をまともに聞いてしまった者は発狂すると、まことしやかに伝えられていた。
いつの間にやらその禍々しい花のうわさは広まって、怖いもの見たさの人間が廃墟に集まるようになった。
最初は単なる肝試しであったものが、迷彩色のつなぎに迷彩色のヘルメットを着用し、BB弾を装備したおもちゃのショットガンを手にした人々が、花を射撃して数を競うゲームに熱中するようになったのである。
いかに奇妙な気色の悪い植物であっても、人間の顔に見えるものを撃って喜ぶのは良いこととは思えず、一喜一憂して騒ぐ人々を見ていると彼らのエスカレートぶりに気持ちが悪くなってくるのであった。
そして夜が明けかけているのに、取りつかれたように花を撃ち続ける彼らは誰も気が付いておらず、「あと一つだ。これは譲らんぞ。」と最後に残った黄色い禍々しい花をめがけて突進した。
一晩中成長を続けて直径が1メートル以上になった最後に残った黄色い花は朝日に溶けながら名状しがたい叫び声をあげて、ぞくっと身震いしながら目を覚ました私は足がつってしまったのだった。