多分中学生くらいではないかと思われる子たちである。
短い歌謡劇のあとに全員で日本舞踊を舞いフィナーレの挨拶をしている。
こうい予備軍のうちからファンがつくものなのか、盛んに拍手が続き、名前を連呼する女の子たちが舞台の際まで押し寄せて大変な騒ぎになっていた。
と、一人の客席の女の子が舞台の女の子に
「○○ちゃん。シール持ってる?」
と、呼びかけたのであった。
その子が呼びかけたとたんに舞台の上の女の子の一人が振り返って、ちょっと小首をかしげるようなしぐさでうなずき、フィナーレの列からすっと離れて舞台のそでの方に去って行った。
他の熱狂したファンたちはそのようなやり取りには気が付いていないらしく、花束を差し出したり、きれいに包んだプレゼントを渡そうとしたりして、握手を求めて舞台に殺到していた。
「あの、これでいいんでしょうか。」
と、急に声をかけられて振り向くと、私はいつの間にか2階の小部屋から舞台を見ており、階段を上ってきた女の子は、簡単に化粧を落としているが首筋のおしろいは残ったままだ。
舞台で着ていた日本舞踊の着物のままだが、日本髪のかつらは外している。
「私は別に何も頼んではいないんだけど。」
と言うと女の子は
「でも、◆◆さんの関係者の方なんでしょう。」
と、私がこの小部屋にいることが、すなわち特別な人物と関係があるはずだと確信して言っているようなのだ。
「◆◆さんにこれでいいのか聞きたいんですけど、探したけど見つからないし、時間もないので。」
女の子はこれからみんなとマイクロバスで次の公演地に行かなければならないからと告げて、私の手に何かを渡した。
それは母子手帳や、あるいは通帳などを入れるファースナーがついたブックカバーのようなもので、たいへん手のかかった縁取りが縫い付けられていた。
「これ、もしかしてあなたが縫ったの?」
その手のかかったポーチと言うかブックカバーは明らかに手縫いだった。
「だって◆◆さんに気に入られなかったら舞台に立てなくなるんですもの。」
これはいったいどういう展開なのだろう。
中学生くらいの女の子が舞台に立っていて、同じくらいの年恰好の女の子が客席から
「シール持ってる?」
と、呼びかけた。そして仲間の列から外れた女の子が「シール」には見えないブックカバーを持って◆◆さんに渡して欲しいと言っている。
客席から呼びかけたあの女の子が◆◆さん本人なのか?
あの女の子は◆◆さんの関係者なのか?
それで、なんで私はこの子からこのたいへん手間のかかった品物を受け取らなくてはいけないのか。
美しく悲しげな横顔の女の子が、とても気になる夢だったのであった。